◇絵でみる需給動向◇
99年9月(第3週まで)のEU15ヵ国平均の豚枝肉卸売価格(市場参考価格、以下 「豚肉価格」という)は、前年比17.1%高の126.7ユーロ(1万4千円:1ユーロ= 110円)/100kgとなり、99年7月以降3ヵ月連続で前年を上回った。 97年に主要豚 肉生産国の1つであるオランダで大規模な豚コレラが発生し、一時的に豚肉需給が ひっ迫し価格が急騰したことから域内の豚肉生産が拡大した。これにEU最大の豚 肉輸出先であるロシアでの通貨切り下げによる同国向け輸出の激減が追い討ちを かけ、EUの豚肉価格は98年末以降、記録的な低水準で推移していた。しかし、こ こ数ヵ月は、価格回復の傾向が顕著に見られている。 これを主要国別に見ると、99年6月に表面化したベルギーにおける鶏肉などのダ イオキシン汚染問題の影響で、6月および7月にベルギーを除くほとんどの加盟国 で豚肉価格が大幅に上昇した。EU最大の豚肉生産国であるドイツやフランスなど では、その後も豚肉価格は上昇を続けている一方、スペインでは7月をピークに豚 肉価格が再び低下しており、価格の動きに加盟国間で大きな違いが見られる。 ◇図:主要国の豚枝肉卸売価格(市場参考価格)◇
最近の豚肉価格の回復を受けて、EU委員会は9月8日、ロシア向け豚肉輸出補助 金の引き下げを決定した。枝肉やももなど一部品目を対象に、ロシア向け豚肉の 輸出補助金が現行の100kg当たり53ユーロ(5千8百円)から40ユーロ(4千4百円) に引き下げられた。今回の引き下げは、9月8日から適用されたが、これによりロ シア向け輸出補助金は、他の地域向けとほぼ同水準となる。 さらに、EU豚肉管理委員会は9月14日、98年9月以来実施している豚肉民間在庫 補助(PSA)の発動解除を決定した。最終的なPSAの契約数量に関するデータは 公表されていないが、9月8日までの契約数量は41万9千トンに達している。この うち、デンマークが全体の契約数量の約4割に当たる15万4千トンとなっており、 同国の豚肉価格が緩やかな回復傾向を示していただけに、PSAの発動解除の影響 が懸念されている。 豚肉民間在庫補助の契約数量(9月8日まで) 資料:MLC
このような豚肉価格の回復は、繁殖雌豚のとう汰が進んだ結果、豚肉生産の水 準が落ち着いてきていることが要因の1つとみられる。しかし、加盟国で状況の 差が大きく、スペインなどでは豚飼養頭数の削減が遅れており、EU全体では豚肉 生産量が前年水準を下回るのは99年第4四半期以降になると予測されている。現 在の豚肉価格の回復は、ベルギーにおける鶏肉などのダイオキシン汚染問題の影 響による一時的なものであり、豚肉需給の改善はまだ先との見方も一部にはあり、 現在の動きが本格的な価格回復につながるか、今後の豚肉価格の動向が注目され ている。
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