NZ商業委員会が乳業メーカー合併に難色


国内シェア95%のメーカー設立を計画

 ニュージーランド(NZ)では、乳製品の国際市場における輸出競争への生き残
りを目指し、乳業メーカー(すべて酪農組合による経営)の合併・合理化が数年
前から急速に進められ、現在、NZデイリー・グループ(NZDG)およびキウィの
大手2社を中心とする勢力に整理統合されている。

 99年4月、その大手2社を含めた7社が合併し、国内生乳生産量の95%以上(年
間約1千万トン)を扱う巨大な乳業メーカー「メガ・コープ」を結成する計画が
浮上した。翌5月には、大手2社が合併に対し原則的に合意したことから、原料乳
製品部門と高付加価値乳製品部門への分割など、新メーカーの具体的な枠組みに
ついて検討されていた。


商業委員会、合併計画に対し否定的な報告を発表

 しかし、この合併を実現させるには、国内独占を監視する独立機関であるNZ商
業委員会(Commerce Commission:CC)の承認を得、さらに、各メーカーの出
資者である酪農生産者の75%以上の賛同を得るという手続きを踏まなければなら
ない。

 このうちCCは、国民に及ぼす経済的影響という面から当該合併を審査してい
たが、8月27日、年間5億NZドル(約290億円:1NZドル=58円)の損失を生じる
という否定的な中間報告を発表した。その理由として、新メーカーが独占的立場
を利用して酪農生産者に低乳価を強いる可能性が高いことを挙げ、9月17日まで
に48項目の関連質問に回答するよう酪農乳業界に要求した。


計画の遅れが不可避に

 これに対し、事態を重く見た酪農乳業界は、拙速な対応は危険と判断し、CC
に回答期限の大幅な延期を求め了承された。酪農乳業界は、当初CCによる合併
の承認を受け、10月には生産者投票を実施し、新メーカーの結成を一気に決定す
る予定であったが、今回の報告により、その予定は大幅に遅れることが避けられ
ない見通しとなった。なお、現在のところ、生産者投票は来年2〜3月に延期され
るとみられている。


改革をめぐり生産者の不満が表面化

 一方、政府は、規制緩和推進の一環として、ニュージーランド・デイリー・ボ
ード(NZDB)の乳製品の一元輸出の権限緩和を含むデイリー・ボード法の改正
法案を議会に提出しており、11月の国政選挙の前に是が非でも成立させようとし
ている。政府は、CCの中間報告に左右されることなく法改正作業を進めるとし
ているが、生産者投票の延期により、国政選挙に臨む際の当初のもくろみは大き
く外れたことになる。

 さらに、政府や業界指導層によるあまりにも急激な改革の推進に対し、酪農生
産者の間にもいら立ちと反発が強まっている。9月初旬には、大手酪農組合の役
員選挙で、現職のNZDB会長が落選するという大波乱があった。その後、同会長
は、NZDBから離職することになったが、改革推進の中心人物であっただけに、
その影響が懸念されている。NZの酪農乳業改革は、まさに正念場にさしかかっ
たと言える。

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