牛肉の輸入先をめぐり、政府と業者が対立(インドネシア)


政府は、豪州産からの変更を呼びかけ

 インドネシアでは、輸入牛肉の多くが豪州産のものであるが、このほど政府は、
新たな輸入先として、アイルランド、インド、アルゼンチンの3ヵ国を指定し、
豪州産からこれらの国で生産されたものに変更するよう呼びかけた。これに対し
て輸入業者協会では、政府の提案は時期尚早で受け入れられないとし、政府と対
立している。


経済危機により、牛肉の自給体制確立は困難に

 インドネシアでは、97年までの経済発展に伴い、牛肉需要量が急速に増加した。
このため、牛肉の増産に力を入れているものの、需要の急増に生産が追いつかず、
7万5千〜9万トン程度の牛肉と、国内で肥育するための素牛を20万〜40万頭輸入
していた。その約8割は豪州からのものであった。

 しかしながら、98年に始まった通貨危機と政治不安から、その輸入は急速に減
少しており、政府の発表では、98年の肥育素牛の輸入は約4万頭と激減している。
このため、多くの肥育農家では、増体重の十分でないものや、雌牛までも肉用牛
として売り払うなど、政府が目標としている2005年までに、牛肉を自給できる生
産体制の確立が難しい状況となっている。


業界は豪州産の輸入停止には反対

 このような事態を解決するため、政府は少しでも安価な牛肉を輸入することと
し、比較的価格の低いアイルランド、インド、アルゼンチンを選択し、輸入先を
これらの国に変更するよう呼びかける今回の措置となった。

 しかし、輸入業者協会では、新たな輸入先を開発することには賛成しているも
のの、これまで築き上げてきた関係もあって、豪州からの輸入をやめることには
反対している。

 また、政府の提案しているアイルランドについては牛海綿状脳症(BSE)、イ
ンドとアルゼンチンについては口蹄疫など獣医感染症の問題があることに加え、
これらの国とは取引実績がなく、流通経路の開拓に時間がかかることから、輸入
先として適当ではないとしている。

 さらに、インドネシアの輸入先の変更に向けた動向が、豪州において、インド
ネシア向け牛肉輸出のボイコット運動に発展するかもしれないという情報も広が
っている。


業界は豪州産に期待、政府は安価な牛肉輸入に思惑

 こうしたことに対し、同協会では、豪州からの輸入に支障が生じないよう政府
に申し入れるなど、豪州からの輸入に期待を持っている。一方、政府は、インド
ネシアの牛肉輸入量自体が少ない上、BSEの発生率から見てもアイルランドはほ
とんど問題がなく、インドとアルゼンチンの口蹄疫も、生産地域を限定すること
で問題は生じないとしている。

 現在、インドネシアでは、最近の東ティモールをめぐる政情不安から、同国の
通貨ルピアが下落し始め、この影響による輸入価格の上昇から、少しでも安い牛
肉を輸入せざるを得ない状況となっており、今後の政府の動向が注目されている。

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