◇絵でみる需給動向◇
豪州酪農庁(ADC)によると、98/99年度(7〜6月)の生乳生産量は、前年度 を7.8%上回る1,017万8千キロリットルと、前年度の最高記録を更新することとな った。生乳生産量は、80/81年度に底を打った後、経産牛頭数の回復や1頭当た り乳量の増加に伴い着実に増加してきた。特に、アジア向けを中心とした乳製品 の需要拡大を背景に、90/91年度以降は一貫した増加を示しており、ここ9年間 で約63%の大幅な増加となっている。 ◇図:生乳生産量の推移◇
98/99年度の生乳生産が、豪州農業資源経済局(ABARE)の見込みよりも1年 早く1千万キロリットルの大台に到達することができた最大の要因は、主要な酪 農地帯が、生乳生産のピークに当たる春季に適度な降雨に恵まれ、牧草の生育状 態が良好であったことが挙げられる。これは、豪州の酪農がニュージーランド同 様、放牧主体の季節型生産であることから、天候の影響を強く受けるためである。
州別に見ると、すべての州で前年度水準を上回っているが、特に、ビクトリア (VIC)州などの加工向け生産割合が高い州で大きな伸びが見られた。豪州の生 乳生産の約6割を占めるVIC州では、経産牛頭数や1頭当たりの乳量の増加により、 前年度を9.4%上回る641万4千キロリットルとなった。ADCによると、同州の牧草 の生育状態が良好であったことに加え、最近、比較的安価で推移している飼料穀 物を補助飼料として利用する生産者が増えたため、乳量減が見られる下半期にお いても高水準の生産を維持することができたとみられている。この他、サウスオ ーストラリア(SA)州やタスマニア(TAS)州でも、下半期の生産の伸びがけん 引役となり、それぞれ前年度比11.3%増の64万6千キロリットル、同11.2%増の60 万3千キロリットルと、生産量の実数は小さいものの大きな伸びを示した。 ◇図:飼料穀物価格の推移◇
用途別では、近年の飲用乳消費の伸び悩みを反映し、98/99年度の飲用向け生 産量は、前年度並みの192万4千キロリットルに落ち着くとされている。一方、加 工向けについては、前年度を9.7%上回る825万4千キロリットルとみられている。 今後、飲用乳消費の大幅な増加は見込めない一方、新シーズンに入っても穏や かな天候が続いていることから、99/2000年度に期待される生乳生産の増加分は、 引き続き加工向けを中心とした伸びに支えられることになろう。
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