◇絵でみる需給動向◇
ドイツ市場価格情報センター(ZMP)によると、EU15ヵ国の99年1〜5月のバタ ー生産量は、前年同期比2.7%増の80万3千トンとなった。生産割当(クォータ) 制度の下で生乳生産が管理される中、好調な域内需要などを背景としたチーズ生 産の増加と域内バター消費の減少の影響を受けて、EUのバター生産は97年以降前 年をわずかに下回る水準で推移してきた。しかし、98年後半からEU産チーズの最 大の市場であるロシア向けの輸出が不振に陥ったことから、域内のチーズ生産が 減少しており、行き場を失った生乳がバターや脱脂粉乳などの生産に向けられて いるとみられる。 ◇図:乳製品の生産の増減率◇
ロシアは世界最大のバター輸入国であったが、通貨ルーブルを切り下げた98年 後半から輸入量が急減したため、バターの国際需給はバランスを失い供給過剰の 状態が続いている。同国はEU産バターの最大の輸出先でもあったことから、EU のバター域外輸出も不振が続いているとみられる。こうした状況に加え、EU域内 でバター生産が増加したことが、域内価格をさらに低迷させる要因の1つとなっ ている。 指標価格の1つであるオランダのブランドバター取引価格の動きを見ると、98 年10月をピークに低下し始め、99年4月以降、介入買入価格の水準に近い660ギル ダー(約3万6千円:1ギルダー=55円)/100kgで低迷しており、今のところ回復 の兆しは見られない。 ◇図:バターの域内価格と国際価格◇
この価格低迷を打開するため、2月からはイタリアで、3月からはスペインで 順次入札による介入買入れ 注)が実施された。8月にはこの2ヵ国に加え、ベル ギー、アイルランド、オランダ、ポルトガル、イギリスでも介入買入れが実施さ れている。この結果、8月末の介入在庫は、前年の同月に比べて約9倍の3万6千ト ンに急増した。また、夏期の過剰と冬期の不足を調整する目的で行っている民間 在庫補助制度(PSA:3〜8月まで実施)に基づく在庫量も、8月末には18万7千ト ンと前年同月を約1割上回っている。 ◇図:バターの介入在庫量◇ 注)介入買入れ バターの介入買入価格による買入れは、87年6月以降停止され、委員会規則 EEC/1589/87に基づく入札制度が実施されている。この入札制度は、市場価格が 介入価格の92%を下回った場合に実施され、介入価格の90%より低い価格で買い 入れられる。
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