世界の飼料穀物の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○高温と乾燥気候が米国のトウモロコシ生育に悪影響


強まる干ばつへの懸念

 米農務省(USDA)は先頃、8月1日現在のトウモロコシ作柄動向を発表した。
これによると、主要17州の作柄動向は「優」(Excellent)および「良」(Good)
の合計が全体の63%となり、前年同期の68%より5ポイント、また、本年7月6日
時点の77%より14ポイントも低下した。

 これは、7月に米国の大西洋側中部諸州を中心に襲った高温と乾燥した気候が、
主要な穀物生産地帯である中西部にも広がり、穀物の生育に悪影響を及ぼしたた
めである。


主要穀物生産州の作柄も軒並み悪化

 これを州別に見ると、7月6日時点より作柄が好転したのはわずか4州であった
のに対し、悪化したのは13州に上った。特に、大西洋側の中部に位置するペンシ
ルベニア州では、「良」以上が17%にとどまったのに対し、「劣」(Poor)およ
び「極劣」(Very Poor)が全体の6割近くを占め、干ばつ被害が拡大している。

 また、主要穀物地帯に当たる中西部での生育状況も悪化しており、最大の生産
州であるアイオワ州の「良」以上は、7月6日時点を3ポイント下回る70%、第2位
のイリノイ州は26ポイント下回る56%、第3位のネブラスカ州は13ポイント下回
る69%など軒並み低下している。

◇図:主要州の作柄動向(「良」以上)◇


単収は昨年実績を下回るとの見方も

 このような状況から、今後は、穀物地帯の天候とトウモロコシの単収がどの程
度の水準になるかが注目されている。米国のトウモロコシの単収を見ると、その
年の気象条件などにより大きく変動してきたが、長期間では総じて上昇傾向で推
移している。さらに、近年は、遺伝子組み換えトウモロコシが急速に生産現場に
普及していることも単収を押し上げる一因になっていると考えられる。

 今年度の単収について、一部アナリストによれば、作柄状況で「良」以上の割
合が70%であれば、前年度実績の134.4ブッシェル/エーカーを維持すると分析し
ている。このことから、今年度の単収は、前年度実績を下回る可能性が強まって
きた。

◇図:トウモロコシの単収の推移◇


価格は一時急伸も先行きは不透明

 トウモロコシ価格は、昨年までの米国の生産が順調であったことや、アジア諸
国の需要減などから長らく低迷を続けている。シカゴ商品取引所の期近価格(各
月最終取引日の終値)を見ると、18ヵ月連続で前年同月を下回っており、この1
年では、ほぼ1ブッシェル当たり2.0〜2.2ドルと低水準で推移してきた(左図参
照)。しかし、8月初旬には、米国内の干ばつ懸念が強まったことから、前日比
12セント高と急伸した。今後の展開は、米国の穀物生産地帯の気象条件によると
ころが大きいとされることから、先行きはまだ不透明である。

  なお、米政府は穀物を含めた主要農産物の価格低迷に加え、干ばつ被害の広が
りが懸念される中、緊急農家支援策を検討している。

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