◇絵でみる需給動向◇
EU委員会は7月14日、「生年月日に基づく輸出措置」(DBES:Date Based Expo rt Scheme)の下で、一定の要件を満たすイギリス産牛肉および牛肉製品の輸出禁 止措置を8月1日から解除することを決定した。 DBESが適用され輸出が解禁されるのは、と畜時に6ヵ月齢を超え30ヵ月齢未満 の牛から生産された骨を除去した牛肉および牛肉製品である。生体牛には適用さ れない。また、牛肉を生産するための牛は96年8月1日以降に生まれたもので、そ の母牛は子牛が6ヵ月齢になるまで生存し牛海綿状脳症(BSE)を発症しなかった ことが要件となっている。さらに、BSEを発症した母牛から生産された子牛は、と 畜とう汰されることとされている。
EUは、96年3月にBSEと人のクロイツフェルトヤコブ病との関連が指摘されて 以来、イギリス産牛肉の域内および域外への輸出禁止措置を継続してきた。この 間、イギリスではBSE防疫対策として、感染確率が高いとされる30ヵ月齢以上の 牛のとう汰だけでなく、牛肉消費の減退から生産過剰対策として実施された子牛 と畜奨励金事業などにより牛群縮小が余儀なくされた。このため、牛肉生産は、 BSE問題発生直前の95年の約7割の水準で低迷している。 イギリスのうち、北アイルランドにおいては、DBESと同様な「輸出保証牛群 措置」(ECHS:Export Certified Herd Scheme)が98年3月に承認され、同年6月 から牛肉輸出が解禁されている。DBESについては98年11月にEUにより承認され、 輸出の解禁日はその運用状況が満足いくものである場合に検討されることになっ ていた。4月までの調査で、その運用は大きな遅滞もなく行われ、ほぼ満足いく ものであることが確認されたことから、今回の決定に至った。 今回のEUの決定に関し、イギリスのブラウン農相は、同国の牛肉産業が世界市 場から疎外された期間は大変長かったが、輸出の再開はこれまであらゆる安全対 策を適切に講じ耐えてきた関係者の功績であると歓迎の意を表している。 ◇図:イギリスの牛肉需給の状況◇
95年当時、イギリスは生産量の約3割を輸出しており、そのうち域内への輸出 は8割を占めていた。イギリスの今後の課題は、DBESの適正な運用はもちろんの こと、長期にわたり失った市場をどのように回復していくかである。特に最初の 1年間は近隣の主要貿易相手先であるフランス、ベルギー、オランダなどを中心 に輸出されるものとみられている。 しかし、EU委員会によるイギリス産牛肉の輸出解禁の決定を時期尚早とする批 判もあり、ドイツ、フランスなどでは、国内のイギリス産牛肉輸入禁止措置の解 除手続きが進んでいない状況にある。また、実際に輸出が再開されたとしても、 食品の安全性に対する関心がさらに高まっている中で、消費者が抱いているであ ろうイギリス産牛肉に対する不信感をいかに払拭するかとの問題もあり、イギリ スの牛肉輸出が市場に受け入れられ、95年以前の状況に回復するまでには、かな りの時間が必要であると思われる。 95年のイギリス輸出先別牛肉輸出量 資料:MLC 注:製品重量ベース
元のページに戻る