◇絵でみる需給動向◇
ブラジルが、通貨レアルの下落に応じ、輸出価格の引き下げを求める日本の需 要者のオファーをこれまで拒んでいたことで、タイの日本向け鶏肉の輸出価格は、 もも角切りが1トン当たり2,050USドル(以下「ドル」という。)、もも正肉(サ イズ別に仕分けされたもの)が同1,850ドルを維持することができた。タイは、7 月以降も日本向け輸出価格を、1トン当たり100ドル引き上げることをもくろみ、 強気の姿勢で価格交渉に臨んでいた。ところが、年末手当の成約期限となる7月 中旬以降、ブラジルが日本向け輸出価格の引き下げに応じ始めたことで、輸出価 格の国際相場は一気に下げ基調となった。この影響を受けてタイの日本向け輸出 価格は、逆に100ドル引き下げとなる相場の急反落を見せ、タイ側は対応に苦慮 することとなった。タイの大手鶏肉輸出業者は、7月上旬まで1,850ドルを維持し たもも正肉が、7月中旬以降1,750ドルに反落した上、さらに引き下げの要求を受 けるとともに、これまで3ヵ月単位で交わされていた輸出の成約が、今回は下げ 基調の輸出価格を勘案して、2ヵ月を単位とするものに短縮されたとしている。 また、同業者は、中国が米国から安値で輸入した冷凍骨付きもも肉を脱骨・再凍 結し、もも正肉として日本向けに1トン当たり1,650ドルもしくはこれを下回る低 廉な価格で大量に輸出しており、このことも輸出価格引き下げの要因となってい るとみている。
タイの日系合弁企業は、製品価格の引き下げ、新製品の開発などの要請を受け て、現地で生産する鶏肉調製品の数量を年々増加させている。特に、もも肉を使 用した唐揚げは、新製品の投入などにより種類も豊富となり、生産量も年々増加 している。同企業は、受注のあった鶏肉調製品を指定期日に納品するために、も も肉などの原材料を確保する必要性から、輸出価格と比較して割高な価格で仕入 れを行っている現状となっている。他方、鶏肉処理加工業者は、有利な価格で同 企業に原材料となる鶏肉を販売できることから、し烈な競争を伴う輸出から国内 出荷に力を注ぎ始めている。鶏肉処理加工業者によると、唐揚げの原料となるも も正肉の同企業への販売は1kg当たり約70バーツ(1バーツ=約3.2円)で、これを 1ドル=37バーツの為替で1トン当たりのドルベースに換算すると約1,900ドルとな り、昨今の1,750ドルを下回るもも正肉の輸出価格と比較しても有利な価格になる としている。このことは、これまで輸出用としていた冷凍鶏肉が、国内で生産す る鶏肉調製品の原材料として使用され、国内の鶏肉需要の底上げにつながってい る。
マレーシアで発生した豚のニパ・ウイルスの影響による鶏肉需要の増加は、タ イから冷凍鶏肉ばかりでなくブロイラー用ひなの輸出も増加させている。鶏肉処 理加工業者によると、このような状況により、年末用に手当てするブロイラー用 ひなが不足気味となっており、ブロイラー価格の上昇要因になるものとみている。 ちなみに、チャロン・ポカパンが販売するブロイラー用ひな1羽当たりの価格は、 年初10バーツ前後であったが、5月以降急上昇し、6月末では12.5バーツになって いる。
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