◇絵でみる需給動向◇
台湾では豚の飼養状況を的確に把握し、今後の肉豚の供給予測に資することを 目的として、行政院農業委員会(農業省に相当)と台湾省政府農林庁が共同で毎 年2回、豚の飼養動向調査を行っている。このほど発表された99年5月末現在の調 査結果によると、豚総飼養頭数は679万3千頭となり、前年同月比では95.3%とや や減少しているものの、前回調査(98年11月)と比較して103.9%と、97年3月に 口蹄疫が発生して以来、初めて増加に転じた(左図参照)。 台湾の豚肉需給は、口蹄疫が発生して以来、米国から若干の輸入はあるものの、 基本的に国内完結型となっている。このため、政府は全国の豚飼養頭数を、生産 と消費需要のバランスを図るために600万〜750万頭にまで削減することを当面の 目標としてきたが、98年5月の調査時点で、既にこれを十分に達成しており、豚 飼養頭数の減少幅は次第に小さくなっていくと予想されていた。
飼養動向を豚のカテゴリー別に見ると、60kg以上の肥育豚が前回調査時よりも 5.6%減少したが、それ以外はいずれのカテゴリーでも飼養頭数が増加している。 増加幅が最も大きかったのは未経産豚で、20.6%の増となっている。台湾では口 蹄疫の発生に伴い、98年1月から肉豚の供給過剰の解消を目的として繁殖母豚と子 豚のとう汰事業が開始された。このため、98年5月の調査では繁殖母豚、中でも未 経産豚は、その前の調査時に比べ24.8%も減少したが、同年9月上旬の豚価の高騰 に刺激されて同年11月の調査時では増加傾向を見せ、今回の調査ではついに97年 11月調査時の水準にまで回復した。 こうした動きは、政府による養豚農家の離農補償政策が進展する一方で、繁殖 母豚と子豚のとう汰の影響等で、出荷適齢期に向かう60kg以上の肥育豚の生産頭 数が減少したことなどを背景として、昨年12月後半頃から再び高騰し始めた豚価 に反応し、比較的規模の大きい養豚農家が経営規模を拡大することで、さらなる 利潤の追求を図ろうとしているためであると考えられている。 なお、農業委員会および省政府農林庁によると、99年下半期の肉豚の供給可能 頭数は約459万頭で、そのうち第3四半期が約227万頭、第4四半期が約232万頭と予 測されている。 豚飼養頭数 資料:台湾省政府農林庁
98年末から高騰した肉豚卸売価格は、その後もほぼ6千元台後半から7千元台 (1元=約3.74円)の高値で推移しており、7月に入ってからは7千元台で安定的 な動きを見せている。 台湾では、7月1日から米国以外の国々に対しても一定の限度数量内で豚肉市場 が開放されており、政府は、今後の豚の飼養頭数の増加が国内の市場に与える影 響について、注意深く観察する方針だ。政府の試算では、今回調査の経産豚72.6 万頭が1頭につき年間13頭の子豚を出産した場合、米国その他の国々に対する輸 入の割当量を加味すると、出荷頭数ベースで国内の豚の需給バランスポイントで ある1千万頭近くとなる。このため、農業委員会および省政府農林庁は、調査報 告の中で、養豚農家は国内の養豚業が今後数年間は完全に内需型産業となること を十分に自覚し、短期的な豚価の高騰によって競って規模を拡大することのない ようにと警告している。 ◇図:肉豚卸売価格の推移◇
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