アルゼンチン農業団体による抗議の動き


農家の収益性低下の中、新税導入に抗議

 アルゼンチンの農業団体は、農産物市況の低迷、ブラジルの通貨切り下げなど
の影響による農家経営の収益性の大幅な低下が見られる中、新たに導入された税
金などに抗議し、6月6日から9日にかけて4日間のストライキを実施した。今回の
ストライキは、4月に続いて今年2度目の大規模なものとなったが、農業団体は政
府側から新税の改正など対応策が示されなかったことに対し、強い不満を表明し
た。

 この2度にわたるストライキにおいて、農業者側は農産物の出荷停止を行った
が、農産物の加工処理工場などは、あらかじめ在庫を積み増しするなどの措置を
講じていたことから、市場の混乱には至らなかった。


農業団体は新税の改正に加え輸出税の撤廃などを求める

 農業団体が改正を求めた新税は、98年12月に可決された税法により適用された
推定最小所得税および金融機関による融資の金利に対する15%の課税である。推
定最小所得税は、課税対象となる資産が合計20万ペソ(約2千4百万円:1ペソ=
120円)を超える場合に、資産の合計額に対し1%が課税されるものである。

 農業団体は、新税の改正に加え、輸出業者に対する付加価値税(IVA)の還付
の迅速化、原皮および油糧種子に課せられる3.5%の輸出税の撤廃を求めた。その
ほか、金融機関による融資の見直しおよび返済期間の延長、差し押さえとなった
担保物件の競売停止、燃料や高速通行料金などのサービス料金の値下げを訴えて
いる。


政府は豚肉および乳製品の関税引き上げなど対応策を示す

 アルゼンチン政府は、6月3日に行われた閣議終了後のロドリゲス首相による記
者会見で、メルコスル域外からの豚肉および乳製品の輸入関税の引き上げ、国立
銀行により融資を受け、差し押さえとなった担保物件の180日間の競売停止、農
薬や肥料等の購入時における付加価値税の5%の切り下げ、輸出業者に対する付
加価値税の20日以内の還付、豚のと畜税6ペソ(約720円)のカットなどを対応策
として発表していた。


政府側は歩み寄りの兆しを見せるも、一部農業団体はデモ行進を実施

 また、7月6日に行われた政府の各代表と農業団体との会議後の記者会見で、
与党の代表ロヘロ議員は、推定最小所得税の課税対象額の下限を資産合計20万ペ
ソから40万ペソに引き上げること、金融機関による融資の金利に対し課税される
税金に制限を設けることなどを国会で審議すると述べた。

 このように、政府側が農業団体に対し歩み寄りを見せたものの、一部農業団体
はこれを不十分とし、7月21日にブエノスアイレス市内において7千人規模のデモ
行進を実施した。

 政府側は、7月26日、穀物農家を対象とする今年の作付けに対し国立銀行など
が8億ペソ(960億円)の新たな融資枠を設定するなどの追加措置を提案したが、
農家経営が危機的状況にあると言われる中、農家の不満を解消するまでには至っ
ていない。

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