米国のラム輸入規制決定に強い憤り(豪州)


予想外の決定に豪関係者は困惑

 米国のクリントン大統領は、7月7日、通商法203条に基づいて、豪州および
ニュージーランド(NZ)からの輸入ラムに関税割当を適用すると発表した。

 米国の輸入制限を回避すべく精力的にロビー活動を展開してきた豪州にとって
は、極めて残念な結果となり、コソボ問題への対応で大統領の発表が大幅に遅れ
たことを朗報の兆しと楽観していた関係者は、冷水を浴びせられた形となった。


大統領への米国際貿易委員会の勧告がきっかけ

 米国際貿易委員会(ITC)は、米国のラム市況が昨年から大幅に低迷した原因
は豪州やNZからの輸入が急増したことにあるとし、4月5日、クリントン大統領に
対し、これらのラム輸入に対して何らかの制限措置を導入するよう正式に勧告し
ていた。ITCは、勧告の中で、具体的な輸入制限措置として、@関税割当の適用、
A割当を定めない一律関税の適用、B輸入割当の適用、の3つの案を提示してい
たが、勧告を受けた大統領は、関税割当の国境措置と併せ、1億ドル(約120億円
:1ドル=120円)に及ぶ国内のラム産業に対する救済策などを発表した。


3年間の関税割当を実施

 クリントン大統領によると、今回の措置の実施期間は3年間で、初年度(99年
7月22日から1年間)の割当数量は約31,851トン(98年の輸入実績)、枠内の適用
税率は9%と定められた。また、2年目以降は、割当数量が毎年約857トンずつ増や
される一方、枠内適用税率は、6%、3%と順次引き下げられることになる。

 他方、割当数量を超過した場合の枠外輸入に対しては、初年度から順に、40%、
32%、24%という極めて高い関税が課されることになっており、枠外の輸入は実
質的に不可能となる。


輸出国側にとって厳しい規制内容

 今回発表された措置は、ITC勧告の関税割当案を基本とする内容になっている
が、双方の内容を比較すると、 ITC案では4年間の措置とされていたものが3年
間に短縮されることとなった。一方、 ITC案では枠内輸入は非課税であったのに
対して課税されることとなり、かつ、枠外税率も初年度はITC案(20%)の2倍の
水準に引き上げられるなど、輸出国側にとっては非常に厳しいものとなっている。

 大統領は、関税割当枠を98年の実績に基づいて国別に割り当てるため、米国の
輸入ラムの約97%を供給している豪州・NZ両国は、一定の輸入アクセスが保証さ
れるとしている。


豪州政府および業界挙げての抗議行動を開始

 こうしたクリントン大統領の発表に対し、豪州では、早速、政府および羊業界
が抗議行動を開始した。まず、ヴェイル農漁林業相は、フィッシャー副首相兼貿
易相と会談後に声明を発表し、自由貿易を語るクリントン大統領は偽善者だと非
難したうえで、世界貿易機関(WTO)のセーフガード条項の討議で問題が解決で
きない場合には、正式に提訴する旨を表明した。

 また、豪州羊肉協議会(SCA)も声明を発表し、米国の措置はWTOのルールに
完全に違反するものだと非難し、今回の措置によって恩恵を受けるのは、米国の
ラム生産者ではなく、不当な関税を徴収することになる米財務省だと怒りを表わ
している。

 豪州政府としては、11月末からのWTO次期ラウンド開始を前に、厄介な課題が
増えたと言えよう。

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