回復基調の中国の家きん肉輸出(中国)


急成長を遂げてきた中国の家きん肉産業

 世界の家きん肉生産は、牛肉の生産が頭打ちの傾向を見せている中、国連食糧
農業機関(FAO)の試算によれば、2005年には約8千8百万トンとなり、93〜95年
の生産量に対し、年平均5.6%(牛肉は1.0%)という高い比率で増加を続けると
予測されている。1960年代における家きん肉生産は、北米と西欧に二極化してい
たが、その後30数年間で、西欧のシェアが、著しい経済成長を遂げるアジアと南
米にシフトする形で四極構造へと移行した。中でも中国は、85年から生産を急激
に拡大し、87年にはブラジルを抜き、米国に次ぐ世界第2位の家きん肉生産国と
なった。「中国牧業通信」によると、中国の家きん肉生産量は、85年に約160万
トンで世界の生産量の5%程度であったが、その後は年平均17%ずつ増加し、97
年には約1,228万トン、全世界の約20%を占めるまでになっている。こうした急
成長の背景には、80年代半ばからの開放政策を契機に、中国への外資の導入が積
極的に図られるようになったことや、企業設立に対して税制面での優遇政策がと
られてきたこと、さらに、中国の経済成長に伴い、かつては高価で晴れがましい
食材とされてきた鶏肉に、消費が幾分シフトしたことなどがあると言われている。
また、中国の食肉生産全体に占める家きん肉のシェアも拡大し、農業部(農業省
に相当)がとりまとめた「中国農業発展報告」によると、90年における「家きん
肉およびその他食肉」が食肉生産全体に占めるシェアが12.0%であったのに対し、
97年は20.6%となっている。


低下する家きん肉価格

 このようなめざましい発展を遂げてきた中国の家きん肉産業だが、その生産増
加があまりにも急激であったため、その反動で98年11月以降全体に価格は低下傾
向にある。その理由として、@急速な投資により家きん肉の生産が急増し、供給
過剰を招いたこと、A長期低迷を続ける豚価に失望した一部の養豚農家が、急成
長を遂げる養鶏などに転向し、供給過剰に拍車をかけたこと、B穀物の豊作など
による飼料価格の低下に伴って家きんの生産コストが低下したこと、C豚肉や野
菜など食料の価格が全般的に低下している中で、家きん肉の価格のみが上昇する
状況ではないことなどが挙げられている。

◇図:自由市場におけるブロイラー小売価格◇


家きん肉輸出は回復傾向、99年1〜6月は冷凍品輸出が25.1%増

 一方、中国の家きん肉の輸出について見ると、96年までは増加を続けていたも
のの、97年(対前年比96.7%)および98年(同81.4%)はそれぞれ減少に転じた。
これは、中国の競争相手国であるタイの通貨バーツが97年7月以降急落し、タイ
産ブロイラーの輸出競争力が強まったこと、97年末に香港で発生した鳥インフル
エンザへの懸念から中国産家きん肉が敬遠されたことなどによるとみられている。
中国の最大の貿易相手国である日本への家きん肉輸出についても、97年は21万3
千トン、前年比101.8%とわずかに増加したが、98年は前年比97.6%の20万8千ト
ンと、91年以来初めて減少に転じた。しかし、今年上半期における日本への家き
ん肉輸出は、10万4千8百トン、前年同期比10.4%の増加を示しており、仮にこの
増加水準を維持したとすると、99年の対日輸出量は、23万トンに達することにな
る。さらに、わが国への距離的な有利さから中国の独壇場となっている冷蔵品は、
今年上半期で13.3%の増加となっている。なお、中国海関統計によると、中国が
今年上半期に各国に輸出した冷凍家きん肉(冷蔵品の統計はなし)は、全体で前
年比25.1%増と大幅に増加している。


EUへの輸出にらみ、アジア最大規模のダチョウ肉加工処理場が完成

 ところで、このほど北京郊外に、中国農墾集団傘下の中墾鴻拓集団によってア
ジア最大のダチョウ肉の加工処理場が完成した。同処理場では、製品の70%が輸
出向けとなっているが、今後EUへの輸出も視野に入れ、EUの検査基準を満たす
ために最新の加工技術と生産ラインを整備しているとされる。この工場では、年
間5万羽の処理が可能で、食肉製品を2千トン、皮革製品を6万平方メートル近く
生産することができるという。中国はアジア最大のダチョウ養殖国になりつつあ
り、その規模は十数万羽にも達している。しかし、ダチョウ肉の販売ルートの確
立が国内4百社余りある養殖企業の悩みの種となっており、この加工処理場の完
成は、新たな市場の開拓を目指すこれら養殖企業にとって朗報となっている。

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