下落するトウモロコシ価格(フィリピン)


収量増大で供給過剰のトウモロコシ

 7月初旬に1kg当たり5.1ペソ(約16円:1ペソ=3.2円)であったフィリピンのト
ウモロコシ価格が、同月中旬には4.3ペソ(約14円)まで急落した。この価格は、
政府の試算しているトウモロコシの生産費6.0ペソ(約19円)よりも大幅に安く、
供給過剰が価格の下落を招いているとみられている。

 同国の予測によると、今年のトウモロコシの生産量は、第1四半期において前
年同期の約2倍に当たる206万8千トン、第2四半期でも同じく約3倍に当たる80万
2千トンとなっており、年間を通じて大幅な増加が見込まれている。政府はこの
原因を、エル・ニーニョ現象からラ・ニーニャ現象に移行する半年間に、トウモ
ロコシの作付けが多く行われたことが原因であるとみている。


供給過剰に追い打ちをかける安価なトウモロコシ輸入

 フィリピンではガット・ウルグアイ・ラウンド農業合意に基づき、95年に100%
であったトウモロコシの関税を、2004年には50%まで引き下げることとしている。
しかし、昨年から家畜と家きんの飼養者については、98年が20%、99年が15%、
そして2000年には10%という低税率でトウモロコシを輸入できる特別措置を実施
していることに加え、世界的なトウモロコシ価格の下落により、輸入価格が1kg
当たり3.4ペソ(約11円)と国産の価格と比較して大幅に安いトウモロコシが、多
く輸入される状況となっている。


対応に苦慮する政府

 エストラーダ大統領は、こうした状況に対処し農家の収入を確保するため、最
大の産地であるミンダナオ島でのトウモロコシの買い入れを行うよう指示した。
これを受けて、農業省では、財務当局に対し買い入れに必要な3億ペソ(約9億6
千万円)の資金調達を要請するとともに、買い入れたトウモロコシを保管する倉
庫の手配を開始した。しかし、買入資金の調達は、現在の緊縮財政の中ではかな
り困難となっており、また倉庫についても、昨年からの持ち越し在庫が7万トン
以上もあることから、ミンダナオ島の倉庫のほとんどを買い入れたトウモロコシ
の保管に使用しても、とても収納しきれない状況となっている。また、飼料製造
業者の多くが工場を持つルソン島への輸送も、船便の数が少ないことから、順調
には進んでいない。このような産地での過剰な状況は昨年から続いており、ミン
ダナオ島では、倉庫に収納しきれなかったトウモロコシ約15万トンが野ざらしと
なって廃棄処分されている。

 このため、トウモロコシ生産農家では、政府による買い入れを条件として販売
代金を先払いする、特別資金調達制度の導入を要請し、所得の確保を望んでいる。
一方、政府は最近になって、昨年からの在庫を購入時の1kg当たり6.5ペソ(約21
円)よりも安い6.1ペソ(約20円)で売り払うなど、今年生産されたトウモロコシ
の収納場所の確保に懸命になっているものの、政府の販売価格が国内の市場価格
に比べて高すぎることから売れ行きは良くなく、今後の対応に苦慮している。

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