タイ北部国境から家畜の輸入を禁止


国内の肉用牛不足で増加した生体牛の輸入

 タイでは、家畜を含む農産物、日用雑貨品、耐久消費財、医薬品など多くの商
品が、北部で国境を接するミャンマーなどからチェンライ、ターク県などを経由
して、国内市場に輸入されている。

 バンコク銀行の調査レポートによると、今年5月におけるミャンマーからの輸
入額は、前月の5千万バーツ(約1億7千万円:1バーツ=約3.4円)から8千6百万
バーツ(約2億9千万円)と大幅に増加した。その商品の過半は、北部で国境を接
しているターク県を経由して輸入された4千4百万バーツ(約1億5千万円)の生体
牛で占められていた。さらに、ラオスからの5月の輸入は、前月の4倍の4千4百
万バーツにもなっていた。

 このような増加は、例年5月中旬から始まる雨期までに輸入を終了させるため
に毎年見られるものであるが、今年はタイ国内の肉牛が大幅に不足しているため、
特に輸入頭数が増加したとされている。


密輸入による家畜疾病のまん延防止などに乗り出す政府

 タイに輸入される家畜は、病気に感染していないことを確認するため、通常21
日間の検疫を受けることとなっている。しかし、これまでにも一部の悪徳な家畜
輸入業者が、検疫を逃れるため病気に感染した家畜を不法に密輸入し、国内の家
畜市場などに流通させ、周辺の家畜に病気をまん延させる場合が見られており、
大きな問題となっていた。

 このような状況の中、政府は、6月28日にミャンマーから輸入した生体牛が口
蹄疫に感染していたことを発見し、急きょ7月5日から2ヵ月間、国境を接するチ
ェンライほか7県に対し、生体牛の輸入を禁止する措置を講じるとともに、北部
国境から密輸入される家畜の監視を強化することとした。

 これは、国内の一部の口蹄疫清浄化地域から食肉を輸出しようとする政府の交
渉に、大きな支障を来すことから強く打ち出された措置で、政府が家畜疾病のま
ん延防止の強化に乗り出したものとみられている。また、家畜輸入業者は、密輸
入により逃れられていた税金を徴収して政府の歳入の増加を図るため、北部国境
地域における密輸入の取り締まり強化に乗り出したのではないかと憶測している。

 しかし、家畜輸入業者によると、この禁止措置は、雨期に入る以前に公表され
たものの、一部の業者には情報の伝達が間に合わず、結果的に数百頭の生体牛の
輸入ができなかったとして、公表のしかたを批判している。


生体牛の輸入は、すべて北部国境に接する国から

 97年にタイへ生体で輸入された牛および水牛の頭数は、それぞれ23,987頭およ
び8,891頭で、全頭数が北部国境に接するミャンマー、カンボジアおよびラオス
から輸入された。そのうちミャンマーが、それぞれ19,434頭および7,781頭と全
体の8割以上を占めている。

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