EUのホルモン牛肉輸入禁止に対する制裁を開始(米国、カナダ)


食肉製品を中心に100%の報復関税を適用

 米国およびカナダ政府は、EUのホルモン投与牛肉輸入禁止措置に対する制裁措
置として、それぞれ7月29日および8月1日からEU産食肉製品などへの100%の報復
関税適用を開始した。

 米国の制裁対象品目は、米通商代表部(USTR)が7月19日に発表したリストに
基づくもので、牛肉、豚肉、ハムなどの食肉製品に加え、トマト、ロックフォー
ルチーズ、トリュフ、フォアグラなどといった特産品まで多岐にわたっている。
これらの品目は、USTRが3月22日、EUが5月13日の実施期限までに世界貿易機関
(WTO)裁定に従わない場合に、その制裁措置としてEUからの輸入品の一部に対
して100%の報復関税を課すとして公表した対象品目の候補リストから絞り込ま
れたものである(これまでの経緯については、本紙99年5月号「トピックス」参
照)。

 また、これらの品目については、それぞれ対象国も明示されており、食肉製品
についてはイギリスを除く14カ国が対象とされている。

 一方、カナダ政府も7月29日、EU産品の制裁対象品目リストを発表したが、キ
ュウリおよびガーキン(ピクルス用キュウリ)の1品目を除くと、牛肉、豚肉、
家畜のレバー(調製品)などすべて食肉製品となっている。


WTOパネルの裁定を受けての措置

 対象品目は、WTO仲裁パネルが7月12日、EUのホルモン投与牛肉輸入禁止措置に
よる米国およびカナダの損害額をそれぞれ1億1,680万ドル(140億円:1ドル=120
円)および1,130万ドル(14億円)と発表したことを受けて、米、加政府によって
その枠組みの範囲内で選定されたものである。両国は、自国産牛肉の輸出機会の
損失額に相当する額として、それぞれ2億2百万ドル(242億円)および5千1百
万ドル(61億円)と主張していたことから、WTOの査定はいずれもこれを大幅に
下回る結果となった。

 グリックマン農務長官は、WTO裁定時、損害額が過小に評価されたとして不快
感を示しながらも、この裁定を受け入れると表明した。さらに、制裁措置の実施
に当たっては、EUがWTOのルールを順守しなかったことに改めて遺憾の意を表す
とともに、たとえ自国に不利な裁定が下されても、日本が果実問題に対応したよ
うに、きちんとそれを受け入れるべきであるとEUをけん制した。


米国の制裁リストは業界の要請を反映

 米国食肉協議会(AMI)、ファーム・ビューロー、全国肉牛生産者・牛肉協会
(NCBA)および米国食肉輸出連合会(USMEF)の牛肉関係4団体は、制裁に当た
っては、対象品目を定期的に入れ替え、すべてのEU諸国が影響を受ける方式とす
るよう政府および議会に働きかけてきた。このような要請を受けて、米政府は、
ホルモン投与牛肉の輸入禁止措置の維持に最も大きな影響を与えたとみられるフ
ランス、ドイツ、イタリアおよびデンマークの産品を主な対象としたものの、対
象品目の定期的な入れ替え方式については、効果が分散されるとして採用しない
こととした。他方、カナダ政府は、今年4月に一般国民から広く意見を求め、こ
れに基づき制裁品目を調整したとされている。

 今後の対応について、バシェフスキーUSTR代表は、EUとの問題の解決策につ
いては、まだ交渉する余地があることを示唆した。また、カナダ政府も、今回の
制裁措置は、EUがカナダ産牛肉に対して市場を開放するか、双方にとって満足の
いく解決策が合意されれば解除されるとしている。

元のページに戻る