オーガニック農産物に関する全国基準を公表(カナダ)


急成長するオーガニック食品市場

 現在、カナダには、オーガニック農産物および食品を認証する機関が45ある。
これらの機関は、主に地域に根ざした生産者所有の機関であり、それぞれの地域
ごとの多様な利害と価値観を代表している。

 これに対し、ケベック州とブリティッシュ・コロンビア(BC)州では、最近、
州独自のオーガニック農産物の生産・加工基準を策定するとともに、基準への認
証プログラムを制定した。ただし、ケベック州ではオーガニック基準への適合が
強制であるのに対し、BC州では任意とされている。

 オーガニック食品に係る生産者と消費者の情報ネットワークであるカナダオー
ガニック栽培者協会(Canada Organic Growers)によれば、95年現在、認可され
たオーガニック生産者は、1,575人であり、89年の推定値に比べ3倍以上に拡大し
ている。また、同生産者の数は、97年までに1,830人に増加し、さらに、オーガ
ニック生産に移行中の生産者が179人いるとしている。

 オーガニック食品の市場規模は、95年現在、小売食品市場の約1%を占め、年
率15〜25%の割合で成長しているものと推定されている。また、オーガニック食
品は、通常の食品に比べ、少なくとも10〜50%高で販売されている。


米国の基準案にほぼ準拠した内容

 こうした中、カナダ連邦政府は6月29日、オーガニック農産物に関する全国基
準を公表した。この基準には、食品の保存を目的とした放射線照射の禁止、遺伝
子組み換え作物の使用禁止、下水汚泥の使用禁止などが含まれている。また、合
成化学肥料、殺虫剤、成長調整剤、抗生物質などの家畜飼料添加物の使用禁止も
うたわれている。

 さらに、オーガニック農業への転換期間、生産計画および記録、農産物および
家畜の生産、オーガニック食品の加工、包装、表示、貯蔵および販売、認可物質
のリストなどが規定されており、現在、米国で提案されているオーガニック基準
案にほぼ準拠した内容となっている。


6つの原則を基に策定

 今回の全国基準は、次の6つの原則が基礎となっている。
@環境の保護、土壌浸食の最小化、汚染の削減、生物学的生産性の最適化、健康
の促進、A土壌の生物学的活動条件の最適化による長期的な土壌の肥よく性の補
充および維持(家畜ふん尿リサイクル、輪換放牧等)、B経営体内外の多様性の
維持および野生動植物の生物学的多様性の保護促進、C経営体内の資源リサイク
ルの最大化、D家畜の健康および活動上の必要性を促進する注意深い管理の提供
(オーガニック飼料の給与、倫理的飼養等)、E最初の取り扱いから販売時点に
至るまでのオーガニック食品および加工品の統一性の維持。

 以上のような原則を踏まえて策定された全国基準について、連邦政府は、オー
ガニックの定義を明確にするとともに、カナダ産オーガニック農産物が世界市場
で通用する規格を提供するとコメントしている。

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