USDA、小規模食肉工場のHACCP導入を推進(米国)


大学の協力を期待

 米農務省(USDA)は7月22日、従業員10名未満または年間売上高250万ドル
(3億円:1ドル=120円)以下の食肉工場における危害分析重要管理点監視方式
(HACCP)の円滑な導入を図るため、オハイオ州立大学、テネシー農業大学、ペ
ンシルベニア州立大学などの5大学に合計約10万ドル(1千2百万円)の補助金を
交付すると発表した。

 これらの大学は、学内の実験室などを小規模食肉工場のモデルとして活用し、
HACCPに関する技術的な訓練や情報提供を実施するとともに、工場経営者などに
対して、マンツーマンで指導することとなっている。グリックマン農務長官は、
このプロジェクトについて、大学と食肉工場による協力の模範になるものとコメ
ントした。


各種の支援事業を用意

 また、USDA食品安全検査局(FSIS)も同日付けのニュースリリースで、食肉
工場に対するHACCP導入の支援事業について説明しており、これらの中には、@
小規模食肉工場に対するHACCP導入の推進を図るための支援を行うコーディネー
ターの配置、A既に同方式を導入している大規模食肉工場による技術指導、B特
定地域での技術指導研修会の開催、Cアジア系やヒスパニック系食肉工場経営者
に対する言語上の援助(通訳)、Dガイドブックをはじめとする各種印刷物の作
成配布、E自習用ビデオの制作、Fあらゆる質問に回答する無料電話相談の実施
などの対策が含まれている。


産官学を挙げての取り組み

 米国では、96年7月の食肉関連規則の改正を受け、約3百の大規模食肉工場(従
業員500名以上)は98年1月26日から、約2千3百の中規模工場(従業員10名以上50
0名未満)は99年1月25日から、HACCPが既に実施されており、同方式の導入計画
で残るのは、来年1月25日からの小規模工場のみとなっている。

 FSISは、これまでのHACCPの実施状況について、98年の大規模工場でのHACC
P要件の順守率が92%と高く、発生したいくつかの問題については、該当する工
場におけるHACCP実施計画の強化などにより解決が図られたことなどから、業界
および政府の努力によって円滑に導入されていると述べている。

 また、 FSISは、同方式の導入効果として、米国の食肉はより安全なものになっ
ており、疾病管理予防センター(CDC)の報告でも、サルモネラ菌などによる食
中毒発生件数が減少したとしている。

 食肉の安全性の問題は、これまでクリントン大統領自らが取り上げている通り、
米国政府にとって重要な課題であり、今後、来年1月の実施期限に向けて産官学
を挙げての取り組みが続けられるものとみられる。

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