◇絵でみる需給動向◇
99年の夏以降、上昇傾向を示していた域内の脱脂粉乳価格は、2000年に入って も依然として上昇が続いている。指標価格の1つであるドイツの工場渡し価格は、 98年10月以降、3.75マルク(約210円:1マルク=56円)/kg前後で低迷していた が、99年6月には上昇に転じ、2000年2月には、前年同月比12.8%高の4.24マルク (237円)/kgと、最近4年間で最も高い水準に達している。 こうした価格の上昇は、@子牛早期出荷奨励事業の終了で飼料向け需要が増加 していることに加え、A99年後半からチーズ生産が回復したことにより、脱脂粉 乳生産に仕向けられる生乳が減ったため、生産が減少傾向にあること(99年12月 の生産量は、前年同月比13.4%減)、さらに、BEUの主要輸出先であるメキシコ やアルジェリア向けの輸出が、輸出補助金の引き上げなどにより回復したことな どの要因が複合的に作用した結果であるとみられる。 ◇図:脱脂粉乳域内価格(ドイツ、工場渡し価格)◇
介入在庫の状況を見ると、飼料用を中心に順調に放出された結果、99年8月の 27万3千トンをピークに減少を続け、2000年2月末には前年同月の約7割の水準に 当たる15万7千トンにまで減少している。3月から介入買入れの対象期間が始まっ たが、現状の需給状況に大きな変化が見られなければ、年内は買入れ量よりも放 出量が上回るとみられており、今年中には介入在庫量が10万トンにまで減少する との見方もある。 ◇図:脱脂粉乳の介入在庫量◇
需給状況の改善を受けて、EUは99年10月29日から脱脂粉乳に対する輸出補助金 を引き下げた後、さらに、12月17日と1月28日の2度にわたり引き下げを実施した。 これにより、わずか3ヵ月の間に、輸出補助金は15.6%引き下げられたことにな る。国際価格に大きな影響を与える脱脂粉乳のEUの積み出し港価格(FOB)は、 域内価格の上昇と輸出補助金の削減により大幅に上昇した。域内需給やユーロ安 で推移する為替相場の動向からすると、さらなる輸出補助金引き下げの可能性も 否定できない状況であるが、EUの乳業・酪農業界は、現在の比較的良好な域内の 需給バランスを崩すきっかけとなりかねないとして、さらなる補助金の引き下げ に強い警戒感を示している。
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