参 考
－米国の２００９年までの農産物需給長期見通し－
米農務省（USDA）は毎年、「農業観測会議」を開催し、この中で米国における
主要農産物の需給状況について、今後10年間の長期見通しを公表している。この長
期見通しは、農業予算の支出見込みの算定や政策の決定などの際に利用することを
主な目的として、USDAの各部局の委員から成る農業観測委員会によって取りまとめ
られる。同委員会では、農業制度の枠組みや経済などについて一定の前提条件を与
えた上で、今後の需給状況などについて毎年観測を行っている。2000年は2月24、
25の両日に「農業観測会議」が開催され、2009年までの農業全般の需給に関する長
期見通しが公表した。なお、今回の見通しは、99年11月時点における諸条件を基礎
として策定されたものである。
Ⅰ 長期見通し策定に当たっての前提条件
１. 米国および海外のマクロ経済状況
(1) 2004年から2009年までの年平均実質国内総生産（GDP）成長率は、米国が
2.6％、世界全体で約3.2％（前回見通しでは、米国が2.5％、世界全体で
約3.0％）
(2) アジア諸国は経済危機から脱却し、年平均実質GDP成長率は、2003年まで
が4.7％、その後の5年間が6.1％と高い伸びを想定。とりわけ中国は、20
09年までの10年間で年平均7％と最も高い成長率が見込まれる。
(3) ロシアを含む旧ソビエト連邦諸国は、短期的にはゼロ成長、2004年から2
009年では2.0％の成長が見込まれる。
２. 米国の農業政策
96年農業法、（96年から2002年までの基本政策）に基づく現行政策（99年11
月中旬までに成立した諸政策を含む）が2009年まで適用される。
(1) 穀物
ア 作付けの自由化（減反計画の廃止）
イ 生産弾力化契約（直接固定支払）
ウ マーケティングローン等
(2) 酪農
ア 加工原料乳価格支持制度において、99年水準での支持価格による1年間
の延長（200年末の制度廃止）
イ 2001年から開始される乳製品製造業者に対する融資制度等
３. 米国の輸出補助計画およびその資金規模
(1) 輸出促進計画（EEP)
(2) 乳製品輸出促進計画（DEIP)
(3) 輸出信用保証（GSM)
(4) 食糧援助計画（PL480）
Ⅱ 主な概要
96年農業法の成立により、米国の農業政策は市場指向性を高める方向に大きく転
換した。穀物生産部門においては、不足払い制度および減反計画が徹廃（作付けが
自由化）され、折からの穀物価格の高騰に伴う輸出の拡大などから、米国生産者に
大きな利益をもたらす結果となった。しかし、96年農業法の成立から4年が経過し
た現在では、ロシアに代表される多くの国々での経済不信により農産物需要が低迷
する中、世界的に生産量が増加した結果、穀物や豚肉などの価格が低迷しており、
米国農業は大きな打撃を受けている。このような状況の中での農産物輸出額および
農業純収益の長期見通しは、以下の通りとなっている。
１. 農産物輸出額
需要の減退と世界的な生産増加による農産物価格の低迷により、見通し期間の
初期において、農産物輸出額は減少が見込まれる。しかし、経済危機に見舞われ
た諸国で景気が回復しつつあることから農産物需要が増加するとともに、農産物
価格も上昇が見込まれることから、農産物輸出額は、2001年には増加に転じると
みられる。その後も、開発途上国を中心に堅調な需要の伸びが見込まれるため、
農産物輸出額はさらなる増加が予測され、2007年以降は前回見通しよりわずかに
多い輸出額が見込まれている。ただし、見通し期間を通して主要輸出国における
増産の潜在性が存在するため、輸出市場での競争は激化するとみられる。
農産物輸出額の見通し
２. 農業純収益
農産物輸出額同様、農業純収益も見通し期間の初期において減少するとみられ
る。ただし、農産物輸出額の回復が2001年であるのに対し、農業純収益が前年を
上回るのは2002年以降と見込まれ、前回見通しと比較しても、見通しの初期から
中期にかけて格差を生じることとなっている。これは、99年および2000年に高水
準で実施された政府による農家への直接支払いが、2001年には大幅に減少するこ
とが前提となっていることによる。長期的に見ると、輸出の増加に伴う農産物価
格の上昇により、農業純収益は増加傾向を維持するものと見込まれる。
農業純収益の見通し
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