高級牛肉の免税輸入が解禁に(フィリピン)


免税輸入品の違法販売で国内価格が暴落

 フィリピンでは、冷凍鶏肉や牛肉などの免税輸入が、99年9月から禁止されて
いる。同国農業省は、このほど、高級牛肉に限りこれを解禁することとし、免税
地域内の2業者に対して輸入と販売を許可した。

 同国では、昨年、業者が冷凍鶏肉や牛肉などを免税輸入し、一般のスーパーマ
ーケットなどで違法販売するなどの行為が多く見られていた。これらの免税輸入
量は、99年6月時点で、冷凍鶏肉では98年の約2倍に、牛肉でも99年1〜6月の全牛
肉輸入量の約10%を占めるまで増加した。このため、1kg当たり45〜50ペソ(約
131〜145円:1ペソ=約2.9円)であった冷凍鶏肉の小売価格が大幅に下落し、26
〜30ペソ(約75〜87円)となるなど、国内生産を脅かす事態となっていた。


業者は高級牛肉の免税輸入再開を要望

 農業省は、生産者団体から免税輸入品の違法販売を禁止する要望が強まったこ
ともあり、昨年9月9日に、食肉の免税輸入と販売を禁止した。この結果、免税業
者が輸入する牛肉にも、通常の輸入牛肉と同じ40%の高関税率が課せられること
となり、免税地域内のレストランなどでも、特に高級牛肉を中心に価格が上昇し
た。このため、これらの業者は、高級牛肉の免税輸入再開を要望していた。

条件付きで免税輸入を許可

 今回、免税輸入が解禁されたのは、骨付き・骨抜きにかかわらず、主にサーロ
インやヒレなどのロイン系と、ショートリブなどのバラ系のプライム級部分牛肉
である。タイプ別には、フィードロットで肥育された去勢子牛か未経産雌牛のも
のに限定されている。

 また、輸入が許可されたのは、米軍基地の跡地を利用している2つの免税輸入
業者で、指定された免税地域内のホテルやレストランなど、限られた業種での利
用が認められているだけである。これら免税輸入した牛肉については、缶詰など
の食肉調製品の製造などに利用したり、免税店などでの小売用に小分けすること
や、小売用に転売することは、この2業者を含め引き続き禁止されている。


政府は解禁条件で国内生産に配慮

 アンガラ農業長官は、高級牛肉は市場で国産牛肉とは競合しないため、免税輸
入の解禁に踏み切ったと述べている。しかし、政府としては、同国の景気回復に
大きく貢献している畜産業を、安価な輸入品の影響から保護する立場もある。今
回の措置に当たっては、かなり厳しい条件が設定されていることから、国内の牛
肉生産への影響にかなり配慮したものとみられている。

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