◇絵でみる需給動向◇
豪州農業資源経済局(ABARE)が今年6月に発表した第1次産品に関する需給予 測によれば、99/2000年度(99年7月〜2000年6月)の生乳生産量は、前年を5.9 %上回る1,078万キロリットルと、過去最高の水準になるものと見込まれている。 増加の要因として、東南アジアや中東地域を中心とする乳製品需要の高まりによ り一部の製品を除き輸出価格が回復したことを挙げている。このため、用途別の 生乳生産では、飲用向けが1.3%減少し、加工向けは7.5%増加すると見込んでい る。 ◇図:生乳生産の推移◇
2000/01年度の動向として、ABAREは、今年7月からの酪農乳業制度改革が生 乳生産に及ぼす影響を大きく取り上げている。これまで規制により高く維持され ていた飲用乳の生産者価格が、規制撤廃により大きく落ち込み、また、加工乳の 価格補てん制度も廃止されることから、飲用、加工用の生乳市場価格は同化する 方向に進むと予測している。 さらに、制度改革の影響を最も受ける酪農経営に関して、生乳価格の下落が農 家所得に大きな打撃を与えることにも触れている。ただし、連邦政府による酪農 経営補償金が、17億8千万豪ドル(約1,157億円:1豪ドル=65円)にも上ることを 挙げ、新制度は完全自由化による市場原理の下で生産者を支援するものになると している。 生乳需給見通し 資料:「Australian Commodities」 注1:経産牛頭数は、年間5千豪ドル以上の農業収入がある農家を対象とし、 毎年度3月末現在 2:99/00年度は測放置、2000/01年度は予測値 3:乳価は、加工原料向けの価格
このような制度改革の影響を踏まえてABAREは、2000/01年度の生乳生産につ いて、2.4%増と最近の増加率には及ばないものの、最高と見込まれる99/2000 年度を上回ると予測している。これは、国際乳製品市場が引き続き好調で、輸出 価格の上昇を見込んでいることによるものである。2000/01年度の生乳の生産者 価格については、いくつかの不安定要素を含むものの、これまでの加工原料乳価 格が基本的な水準となり緩やかに上昇するとしている。今後は酪農経営補償金が、 飲用向け乳価の低落を補う唯一のものとなるが、生乳取引の完全自由化により、 乳価の動向によっては補償金だけで酪農を継続できる保証はない。いずれにせよ 酪農乳業制度改革は、飲用乳生産地域の酪農経営にとって厳しいものになること は間違いない。
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