EUの牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○引き下げが続く脱脂粉乳の輸出補助金


輸出補助金は今年5回目の引き下げ

 EUは6月18日から、今年に入り5回目となる脱脂粉乳に対する輸出補助金の引き
下げを実施した。

 97年後半から引き上げられてきた脱脂粉乳の輸出補助金は、世界的な需給の回
復を受けて99年10月から引き下げに転じ、その後、ほぼ毎月のペースで引き下げ
が続いている。現在の輸出補助金額は、100kg当たり58.50ユーロ(約5,967円:1
ユーロ=102円)と、昨年9月との比較で45%もの引き下げとなった。

 ユーロ安で推移する為替動向を勘案すると、今後もなお一層の引き下げが否定
できない状況にある。

◇図:EUにおける脱脂粉乳輸出補助金の推移◇


高水準を記録する域内価格

 一方、EU域内の脱脂粉乳価格は、99年夏以降、上昇を続けている。指標価格の
1つとなるドイツの工場渡し価格は、今年5月に4.36マルク(約227円:1マルク=
52円)/kgを記録し、89年10月以来の高水準となった。また、国際価格に大きな
影響を与える脱脂粉乳の西欧積み出し港価格(FOB、米ドル)も、同様に上昇傾
向で推移している。

 こうした価格上昇の要因としては、@東南アジアおよび原油価格の上昇などに
より購買力の増した中東の輸入増加に見られるように、脱脂粉乳や全粉乳に対し
て国際的な需要が高まっていること、A乳製品の一大供給地域である豪州、ニュ
ージーランドが乾乳期を迎え、乳製品生産が減少していること、さらに、B米国
の乳製品輸出奨励計画(DEIP)に基づく年間割当が5月で終了し、輸出市場への
供給が減少したことなどが挙げられ、これらが相互に作用したものとみられる。

◇図:EUにおける脱脂粉乳価格の推移◇


生産減少の見込みで、しばらくは価格も堅調

 このような中、EUにおける脱脂粉乳の生産については、いくつかの要因により
今後大幅な増加は見込めない状況にある。

 脱脂粉乳生産の目安となる域内の生乳生産は、乳用経産牛が減少しているもの
の、1頭当たり乳量の増加によりほぼ前年並みで推移している(左図参照)。

 しかしながら、脱脂粉乳生産に影響するバターの価格が、世界的な需要の低迷
を反映して低水準で推移しているため、在庫が増大し、脱脂粉乳生産を刺激する
材料とはなっていない。また、好調な取引に裏打ちされたチーズ生産の拡大や、
需要が高まる全粉乳生産への移行による影響も大きい。この結果、脱脂粉乳向け
の生乳供給も減少傾向にあることから、ここしばらくは、生産減少が続き、価格
も堅調に推移するものとみられている。

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