◇絵でみる需給動向◇
EU統計局の発表によると、2000年上半期(1〜6月)のEU15ヵ国における牛肉 生産量(枝肉重量ベース)は、前年同期を1.1%上回る376万5千トンとなった。 上半期の牛肉生産は、牛海綿状脳症(BSE)問題発生以降、需給調整対策など により減少した飼養頭数の回復が遅れたことから、当初は減少との見方が出てい たが、BSEに対する各国レベルでの取り組みの進展や、安定的な経済成長がもた らす牛肉需要の回復、さらに、需要回復に伴う牛肉価格の上昇が牛肉生産を刺激 した結果、わずかながらも増加することとなった。 ◇図:EUにおける牛枝肉価格の動向◇
主要国の生産動向を見ると、生体牛輸出の増加により国内の牛肉生産が減少し ているアイルランドや、政府の環境対策により畜産農家の削減が進められている オランダなど一部加盟国を除き、各国の生産状況はおおむね増加となった。中で も、BSE問題への積極的な取り組みが効果を上げつつあるイギリスでの生産回復、 さらに、飼養頭数、消費ともに順調な拡大が伝えられるイタリアなどの増加が目 立っている。 今後、下半期の牛肉生産については、これら国々を中心に引き続き増加傾向と 予測されていることから、上半期同様、前年実績を上回るのは確実とみられてい る。 2000年上半期のEU主要国における牛肉生産量 資料:EU統計局、ZMP 注1:牛肉生産量は枝肉重量ベース 2:牛肉には子牛肉を含む
堅調な価格などに支えられ生産増が予測されている中、フランスでは、BSE汚 染疑惑牛肉の販売に端を発した牛肉消費に対する不安感が国内に広がりつつある。 国内の飲食店では、伝統的料理に用いる骨付き牛肉の提供の自粛、また、学校で は、給食への牛肉使用を中止するなどの動きが拡大している。また、これと連動 して、フランスのシラク大統領が国民に向けた演説の中で、BSEに対する新たな 警戒を呼びかけるなど事態は深刻化しつつある。 このような事態に対しEU委員会は、BSEに対する取り組みが確立される中で、 牛肉消費によるBSE感染のリスクは極めて少ないとのコメントを発表し、牛肉消 費に対する不安感の払拭に努めているが、一方では、ロシアやハンガリーなど、 フランスからの牛肉輸入を一部禁止する動きもあり、このような動きが域内各国 を対象に拡大された場合、順調に回復する牛肉需要に大きな影響を与えるとの懸 念が出始めている。 ヨーロッパ諸国におけるBSE発生頭数 資料:OIE資料に基づく各国政府発表数値 注:2000年の数値は、各国政府により集計時期が異なる
元のページに戻る