◇絵でみる需給動向◇
米農務省(USDA)によると、2000年1〜9月の生乳生産量は、前年同期を3.9% 上回る5,766万トンとなった。この増産は、経産牛頭数と1頭当たり乳量がともに 増加したことによる。経産牛頭数については、過去2年の高収益を反映して、新 規参入や規模を拡大した生産者が多かった一方、中小酪農家も経営を継続してい ることから、2000年1〜9月の平均で前年同期を0.7%上回った。更新用未経産牛 価格が比較的高値で推移し、経産牛のとう汰が遅れていることも、経産牛頭数の 増加に拍車をかけているとも伝えられている。また、1頭当たり乳量については、 トウモロコシ価格などの低迷で穀物飼料が多給されたうえ、夏場の天候に恵まれ て良質な粗飼料が給与されたことから、前年同期より3.2%増加した。
USDAはこれまで、下半期の生乳生産が乳価低迷の影響で減少基調に転じるた め、2000年通年の増加率は3%に満たないとの見通しを示してきた。しかし、夏 場の生産が高水準となり、増産基調が今後も続くとみられることなどから、2000 年の生乳生産量は、前年比3.5%増の7,639万トンと、99年を上回る伸びになると 上方修正している。また、2000年の生乳農家販売価格(グレードA(飲用規格乳) およびグレードB(加工用規格乳)価格の加重平均)は、前年比14.1%安の12.4 ドル/100ポンド(30円/kg:1ドル=110円)と、供給過剰の影響で95年以来の 低水準にとどまると見込まれる。 ◇図:生乳生産量および生乳価格の推移◇
こうした中、USDAは10月24日、乳価低迷に伴う酪農家への所得補てん対策と して、6億6,700万ドル(733億円)に及ぶ直接補助金を交付すると発表した。こ れは、2001年度(2000年10月〜2001年9月)農業関連歳出法に盛り込まれた総額 35億ドル(3,850億円)の緊急農家支援対策の一環として措置されたものである (農業関連歳出法の概要については、本号「トピックス」参照)。 USDAは、99年夏と今年4月の2度にわたり、2億ドル(220億円)および1億2,5 00万ドル(138億円)の直接補助金を交付しており、今回も過去に交付実績のあ る者および新規参入した酪農家が交付の対象とされている。また、1戸当たりの 対象数量は、97年または98年のうち生産量の多かった年を基準として最高390万 ポンド(約1,800トン)となっている。 交付額は、2000年の生乳価格と過去5年間の平均価格との差の35%相当で、業 界では、支払単価を生乳100ポンド当たり64.75セント(1.6円/kg)と試算して いる。これにより、約8万戸の酪農家が、平均で8,300ドル(91万3千円)、最高 では2万5千ドル(275万円)の補助金を受け取ることになる。交付の時期は未定 であるが、中小規模の酪農家が多いウィスコンシン州が1億3,700万ドル(151億 円)と、州別では最大の交付先となるものとみられる。
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