フランス政府、牛腸の食用利用を全面禁止に


食品安全局がBSE感染の危険性を勧告

 フランス政府は10月11日、同国食品安全局(AFSSA)の勧告に従い、牛海綿状
脳症(BSE)対策として、牛腸の食用利用を全面的に禁止する意向であることを
明らかにした。

 AFSSAは先般、牛腸に関して、BSEの感染源となる可能性を有する組織すべて
を除去できる前処理方法(洗浄など)はないとした上で「牛の腸すべてがBSEの
感染源となる危険性を有すると考えるべきである」との勧告を行った。

 同国では、EUでの実施に先行して、すでに今年7月から小腸の後半部である回
腸の食用利用が禁止されており、今後、牛の腸すべてについて、食用利用への禁
止措置が拡大されることとなる。


BSE発生頭数増加が措置強化の背景

 牛腸は、主にフランスの伝統的なソーセージなどの食肉加工品に利用されてお
り、年間1万5千トンの食肉加工品が生産されている。食用利用が全面禁止となっ
た場合、食肉加工業者は@合成コラーゲンによるケーシング、A南米などのBSE
非汚染国から輸入された牛腸の利用、B豚など他の畜種の腸への代替−などが求
められることになる。

 一般的なソーセージには、豚や羊の腸が用いられているが、業界団体は「現在、
牛腸を利用して食肉加工品を製造している70社のうち、4〜5社程度は製造する製
品の特性から他への代替が不可能であるため、この禁止措置の影響で廃業に追い
込まれる可能性がある」との懸念を表明している。

 こうした措置強化の背景には、フランスにおいて、BSEの発生頭数が急増して
いることが挙げられる。今年の同国のBSE発生頭数は、11月14日までに99頭が確
認されており、すでに昨年(30頭)の3倍を超えている。発生頭数の増加は、フ
ランスが実施している検査方法の改善とEUに先行して実施されていた広範なBSE
検査によるものとの見方が一般的であるが、BSEがブルターニュ地方などの西部
地域を中心に拡散している事実は否定できない。


今後はEUレベルでの実施を要求も

 フランスは、国内での実施が予定されている牛腸に関する食用消費の禁止措置
について、国内のみならずEUレベル(全加盟国)での実施を求めていくものとみ
られており、今後の論議の動向が注目される。

 なお、EUレベルでは、今年10月1日から、牛と体から以下に挙げる特定危険部
位(SRM:BSE感染源となる可能性が高いと見なされる特定部位)を、と畜場ま
たは食肉処理場で除去することが義務付けられている。

・12ヵ月齢を超える牛の頭がい(脳および眼球を含む)、扁桃、せき髄および回
 腸。また、BSEの発生件数の多いイギリスおよびポルトガルでは、これに加え、
 腸など以下のSRMも除去することが求められる。

・6ヵ月齢を超える牛の頭部(舌を除く)、胸腺、脾臓、腸およびせき髄

・30ヵ月齢を超える牛のせき柱

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