EU委員会、飼料原料への畜産廃棄物使用禁止を提案


BSE問題などの発生防止が目的

 EU委員会は10月19日、飼料原料としての畜産副産物の使用に関し、食用に適さ
ないへい死家畜や廃棄物の使用を禁止し、食用に適する(が、商業的または技術
的理由により食用として消費されない)原料のみを使用できることとする規則を
提案した。この規則の主な目的は、牛海綿状脳症(BSE)やダイオキシン汚染な
ど飼料を原因とする食品問題の発生を防止することである。

 提案の中で動物性副産物は危険度に応じ3分類され、それぞれの処分(使用)
方法を規定することとしている。また、これらの3分類が、収集、輸送、保管、
加工の各段階で仕分けられ、最終製品が確実に区別できるようにする規定が盛り
込まれている。例えば、飼料用でない動物性たんぱく粉(ミール)はマーカーで
染色されなければならないと規定されている。


健康な動物の副産物のみが飼料原料として使用可能

 3つに分類される動物性副産物の概要は次の通りである。

○第1分類(危険度大)

 伝達性海綿状脳症(TSE)の危険性があるもの。不法に使用された禁止物質
(成長促進のためのホルモン剤など)の残留しているもの。環境汚染物質(ダイ
オキシン、PCB類など)の残留しているもの。

・適切な熱処理後、焼却または埋め立てにより完全に廃棄されなければならない。

〇第2分類(危険度小)

 TSE以外の疾病の危険性があるもの(農場でへい死した家畜や疾病の防疫のた
め農場でと畜された家畜など)。動物用医薬品の残留しているもの。さらに、家
畜ふん尿、消化管内容物、と畜場の汚水・汚泥がここに分類される。

・適切な熱処理後、飼料用以外(バイオガス、たい肥、油脂化学製品など)のみ
 に再生利用が許される。

〇第3分類

 健康な動物の副産物(食用としてと畜され衛生検査に合格したもの、外洋で獲
れた魚、健康な動物の乳など)。

・ここに分類されたもののみが適切な処理の後、飼料原料として使用可能である。
 また、飼料およびペットフードの動物性添加物の調製に使用できる原料は、こ
 こに分類されたものでなければならない。


今後、理事会と欧州議会で共同審議の予定

 本提案は今後、理事会と欧州議会で共同審議される予定である。EUでは、BSE
や遺伝子組み換え(GM)作物に対する不安が高まる中で、先般フランスのシラ
ク大統領が、食物残さの家畜飼料への利用禁止を呼びかけるなど、食物連鎖によ
る人間への影響を確実に断ち切ろうとする動きが表れている。

 なお、この規則により直接の影響を受けることとなるEUのレンダリング業界の
規模については、承認レンダリング工場数が400以上、従業員数は17,000人で、
1日当たり約5万トンの動物性廃棄物を処理している。98年には、1,610万トンの
動物性廃棄物がレンダリングに向けられ、300万トンの肉・骨粉と150万トンの油
脂が製造され、飼料原料や化粧品・薬品などに利用された。この処理量1,610万
トンのうち、1,430万トンがと畜場からの廃棄物で、と畜場外でのへい死家畜およ
びその他廃棄物は180万トンであった。

元のページに戻る