5中全会、開放型経済に向け産業構造の調整へ(中国)


次期5ヵ年計画などを討議

 中国共産党の第15期中央委員会第5次全体会議(5中全会)が10月9〜11日、北
京で開催された。中国共産党によるこの全体会議は、同国の政治上最も重要な会
議ともいわれ、78年の第11期3中全会で改革開放路線が採択されたことは有名で
ある。

 今回の5中全会には中央委員183人、中央委員候補144人及び中央規律検査委員
会の常務委員会委員などが出席し、来年から始まる第10期5ヵ年計画(2000〜05年
:「十五」)の具体的な指針などを中心に討議が行われた。


九五の成果を高く評価、新たな5ヵ年計画承認で開放型経済へ

 5中全会は改革開放から20年余りの成果、特に第9期5ヵ年計画(95〜2000年:
「九五」)における中国の経済建設と社会発展などについて、郷鎮企業や外資系
企業の高度成長、貧困解消目標の達成、環境改善などを例に挙げ、「巨大な成功」
と最大級に評価した。また、会議では「全方位の対外開放の枠組みが形成され、
開放型経済は迅速な発展を遂げ」ているとしたうえで、経済と社会の全面的な発
展により、中国の国民生活は「小康水準」、つまりやや裕福な段階にあると評し
ている。

 5中全会は、朱鎔基国務院総理が提案した「十五」の草案を承認して閉幕した
が、新華社を通じて発表された5中全会コミュニケでは、「世界貿易機関(WTO)
加盟に伴い、わが国の対外開放は新たな段階に突入」するとされ、市場開放に伴
う外国企業との競争激化に備え、戦略的な産業構造の調整を積極的に進めていく
との方針が、「十五」の主軸と定められている。


農業の構造を積極的に調整、工業はITをけん引力に

 5中全会では、市場開放により最も大きな影響を受けるとみられている農業に
ついて、その基礎的地位を強化し、国家の食料安全保障を確保するとともに、積
極的な構造調整により、農民の収入を持続的に増加させることが確認された。工
業については、「改組、改造と構造の合理化とレベルアップ」により国際競争力
を高めるとし、情報技術(IT)による工業の推進と発展を実現する姿勢を明確に
した。また、サービス業についてもこれを大々的に発展させ、国民経済における
サービス業の比重を確実に向上させるとの意向も打ち出された。


2010年までにGDP倍増を目標に

 今回の会議では、中国の「発展」は揺るぎのないものであり、「発展」が中国
のあらゆる問題を解決するカギであると位置付けられた。そして、「十五」の期
間中における目標について、「経済成長の質と効率性を高めることにより、2010
年までに国内総生産(GDP)を2000年の倍にする基礎を築く」と定めている。

 農業関係では、西部大開発により小都市群を建設し、工業やサービス業を誘致
して競争力のない農村地帯の農民を吸収し、都市部と農村部との間の格差是正を
図ることとしている。

 しかし、国家統計局の発表によると、今年1〜9月までの中国の1人当たりの月
間所得は、都市部が前年同期比8.4%増の4,719元(約6万1千円:1元=13円)だっ
たのに対し、農村部は2.5%増の1,500元(約2万円弱)にとどまり、格差の拡大が
多くの専門家の注目を集めている。しかも、農村部の増加分は、主に農民の都市
への出稼ぎによるものとされ、農民の増収に対する期待は、あまり高くないとも
いわれる。

 「十五」の計画は今後、文書や電子メールなどで一般市民からの提案や意見も
聴取しながら、国務院や関係部署で具体的に肉付けされ、来年3月に開催予定の
全国人民代表会議(全人代)で正式に決定されるが、計画の実現に向けては、幾
多の荒波も予想されている。

元のページに戻る