豪州からの生体牛輸入規制を緩和(フィリピン)


生体牛輸入規制を毎年20%減から5%減へ

 フィリピン農業省は、今年6月から実施している豪州からの生体牛の輸入規制
を緩和すると発表した。この規制では当初、豪州からの生体牛輸入を毎年、前年
比で20%ずつ削減するとされていたものの、これが5%ずつの削減となる。

 この輸入規制は、フィリピン産果実(マンゴー、バナナおよびパイナップル)
の輸入検査をめぐる豪州との確執に端を発したもので、今年は、昨年の輸入実績
である26万5千頭の20%減として、21万2千頭の輸入を許可することとしていた。
このため、フィリピン国内では、最大手の生体牛輸入業者が、輸入許可証の偽造
による豪州産生体牛の輸入を摘発され、輸入許可申請を凍結されるなど、業界内
に混乱を来す状況となっていた(本誌7月号および8月号「トピックス」参照)。

 両国は9月に、フィリピン産果実の輸入検査に関する協議を行い、フィリピン
政府の要求している3品目について、2年以内に輸入検査を終了することで既に決
着していたことから、今回の生体牛輸入規制の緩和となった。


輸入規制の緩和に伴う恩恵は、ミンダナオ島を最優先に

 農業省では、口蹄疫清浄化地域としての認定を国際獣疫事務局(OIE)に申請
しているミンダナオ島に2万5千頭の生体牛輸入を追加で許可するなどにより、今
年の輸入予定頭数を前年比5%減に抑える計画としている。同省では、先の輸入
規制措置によって、ミンダナオ島が最も大きな損害を受けていることから、輸入
規制の緩和に伴う措置の優先順位が最も高い地域であるとしている。また、予定
通りにいけば、来年5月にはミンダナオ島の清浄化が認定され、牛肉の輸出が可
能となることから、同地域における生体牛の需要は、今後さらに高まるものと予
測されている。

 同省によると、同地域には今年4月現在の統計で水牛102万頭、肉用牛82万頭、
豚324万頭が飼養されており、それぞれ国内総飼養頭数の33.7%、33.1%、30.1%
といずれも3割以上を占めるほか、家畜の飼料となるトウモロコシの生産も盛ん
で、国内最大の生産地帯となっている。


輸入規制は「緩和した」だけ、しかし業界は歓迎の意向

 今回の措置について農業省では、生体牛の輸入規制措置は「緩和した」だけで、
2年後の輸入検査終了が確認されるまでは撤廃しないとしており、最終的に豪州
がフィリピン産果実の輸入を再開するまでは、この措置を継続する考えのようだ。

 回復傾向にあるフィリピン経済の中で、牛肉消費は増加傾向にあるとされてい
る。しかし、これに伴い、国内フィードロットでは肥育素牛の不足が深刻化して
いるといわれている。政府には、このところ低下しているエストラーダ大統領の
人気を、その支持基盤でもある農業者を中心に回復させるとの期待があるとみら
れている。また、この措置により、業界は肥育素牛不足の状況が改善されること
を期待しているようでもある。

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