生体牛輸入の伸びが再び顕著に(インドネシア)


9ヵ月間で昨年の年間輸入頭数を上回る

 インドネシアにおける豪州産生体牛の輸入頭数が、このところ再び顕著な伸び
を見せている。

 インドネシアは従来から、国内の牛肉需要に対応するため、豪州から肥育素牛
を導入してきた。輸入頭数は、90年には3,600頭にすぎなかったものの、94年に
は10万頭を突破し、経済危機直前の96年には、史上最高の37万9千頭を記録した。
しかし、急成長を遂げたフィードロット産業も、97年後半に発生したかつてない
経済危機により大きな痛手を受け、肥育素牛の輸入頭数も98年には3万9千頭にま
で激減した。この間に、多くのフィードロット企業が倒産したり、あるいは事業
縮小を強いられたと伝えられる。

 しかし、経済の回復が徐々に進むとともに、通貨ルピアの下落が一段落したこ
とも好材料となり、99年には再び10万頭を突破して13万3千頭を記録している。
今年に入るとその傾向はさらに顕著となり、1〜9月の輸入頭数(速報値)は14万
頭にまで達し、すでに昨年の年間頭数を上回っている。


経済回復と国産牛のと畜抑制政策が追い風に

 インドネシア肉牛生産者協会によると、各フィードロット企業は、次第に鮮明
さを増す経済回復を追い風に、今年に入って特に活動を活発化させているという。
また、現在、豪州からの生体牛輸入価格は、生体重1kg当たり1.05ドル(約116円
:1ドル=110円)となっており、国内市場での販売価格が同9,800ルピア(約125
円:100ルピア=1.28円)であることから、肥育コストを勘案しても利益が見込
めるとしている。さらに同協会は、政府が国内の牛の飼養頭数を維持する目的で、
国産牛のと畜を最大150万頭に抑える政策をとっていることから、現在の国民1人
当たりの年間牛肉消費量1.7kgを満たすためには、1年に60万頭の生体牛を輸入す
る必要があると試算している。このことは、これまで苦しい経営を強いられてき
たフィードロット業界にとって、事業再拡大の好機が訪れつつあることを意味す
るものとも言えよう。

今年は20万頭台と予測、対豪関係の好転も一因か

 一方、これまでぎくしゃくしがちだったインドネシアと豪州の関係も、最近は
次第に好転しつつあるようだ。両国の関係は、先の東ティモール独立問題をめぐ
り、これまでになく冷え切ったものとなっていた。しかし、時間の経過とともに
両国のわだかまりも徐々に解消し、国民感情の面においても、この問題は次第に
落ち着きを取り戻しつつあると言われる。このことが、最近の生体牛をはじめと
する豪州産農産物のインドネシア向け輸出を促進している一因ではないかと指摘
する向きも多い。

 なお、インドネシア牛肉輸入協会は、豪州やニュージーランドの牛肉需給がタ
イトなため、国内の年末需要を満たすためには、アイルランドから約8千トンの
牛肉を輸入する必要があると述べている。また、インドネシアでは、年末に大き
なイスラム教の祭事を控えていることもあり、牛肉の需要は相当量に上るものと
考えられる。

 インドネシア肉牛生産者協会は、最近、豪州の生体牛はメキシコやエジプトに
仕向けられる傾向があるとしながらも、今年のインドネシアの生体牛輸入頭数は、
経済危機以前の95年の水準に迫る20万頭に達するだろうと予測している。

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