2001年度農業関連歳出法が成立(米国)


約36億ドルの緊急支援措置を計上

 2001年度(2000年10月1日〜2001年9月30日)の農業関連歳出法は、米上院議会
で10月18日に可決された後、10月28日にクリントン大統領の署名により成立した。
同法は、7月中に両院をいったん通過したものの、上院で下院案に対する修正が
加えられたことなどから、新年度に入った10月6日の両院協議会でようやく合意
が成立したものであり、下院では11日に可決されていた。予算総額は、約781億
ドル(約8兆5,900億円:1ドル=110円)である。

 うち、価格低下や自然災害などに対処するための農家への緊急支援措置につい
ては、西部における森林火災の発生や干ばつなどによる被害の深刻化などもあり、
夏の段階での予算額からも上乗せされた約36億ドル(約3,960億円)が計上され
ている。この中には、約16億ドル(約1,760億円)の穀物農家に対する数量・品
質低下対策や約4億9千万ドル(約540億円)の干ばつの影響を受けた畜産農家に
対する損失補てん対策が盛り込まれたほか、約6億7千万ドル(約740億円)規模
の生乳の価格低下に対する酪農家への所得補てん対策も措置されている。この対
策は、単位当たりの2000年の生乳価格と過去5年間の平均価格との差の35%相当
額が直接支払いとして支給されるというものであり、1農家当たりの対象数量の
上限は、390万ポンド(約1,800トン)に設定されている。


加工原料乳価格支持制度は再延長

 その他、畜産関係では、加工原料乳の価格支持制度が再延長(2001年12月31日
までの1年間)されたほか、年内の実施が予定されている食肉パッカーに対する
取引価格などの情報報告義務制度の運営に必要な予算も計上されている。また、
穀物等の価格支持融資制度(ローン不足払いなど)については、1経営者当たり
の上限受給額が、2倍の15万ドル(約1,650万円)に引き上げられている。


キューバなどへの農産物輸出が解禁

 一方、今回の法律には、約40年にもわたる禁輸措置がとられていたキューバを
はじめ、リビア、北朝鮮、イラク、スーダンの5ヵ国に対する食料品および医薬
品の輸出を可能とするための条項も盛り込まれている。
 これに先立ち、米農務省は、輸出信用保証制度などの活用が可能となれば、1、
2年以内には、米国からキューバへの農産物の輸出額が3億ドル(約330億円)ま
で増加し、また、通常貿易関係が確立され、キューバ国内への投資も増加すれば、
5年以内には、これが10億ドル(約1,100億円)にまで増大し、中南米においてメ
キシコに次ぐ輸出相手国になるとの見通しを公表していた。畜産物については、
特に、鶏肉や乳製品(粉乳およびチーズ)を中心とした輸出機会の増大が見込ま
れており、米国内の関係者からは、大きな期待が寄せられていた。
 しかし、最終的には、キューバ向けの輸出に関し、米国の銀行が融資を行うこ
とは禁止され、現金で決済するか、第3国からの融資を仰ぐしかないため、今回
の法律による効果を疑問視する声が多い。
 なお、本法律には、外国企業に対して賦課したダンピング防止税や相殺関税に
よる収入を、影響を受けた国内の関係企業に分配するという、世界貿易機関(W
TO)協定との整合性の観点からも、米国政府の立場を危うくする可能性の高い条
項が付加されており、各国からも激しい反発が寄せられている。

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