◇絵でみる需給動向◇
豪州農業資源経済局(ABARE)の発表(速報値)によると、98/99年度(7〜 6月)の牛肉輸出量は、85万5千トンと90年代で最高を記録した。輸出先につい ては、消費需要に支えられた米国向け、引き続き輸入牛肉の需要拡大が続く日本 向け、さらに、輸出に力を注いだロシア向けなどの伸びが注目される。 一方、インドネシア、韓国など経済危機に直面したアジア向けの大幅な落ち込 みが目立っている。 ◇図:牛肉輸出量の推移◇ ◇図:牛肉輸出量国別割合◇
99年12月公表のABARE予測によると、99/2000年度の生産状況は、99年後半か ら始まった牛群の再構築により農家段階での肉牛の保留傾向が強まり、と畜頭数 は前年度比5%減の860万頭にとどまるとしている。また、牛肉生産量も、と畜頭 数減少の影響を受けて、98/99年度の200万9千トンを3%下回る194万4千トンと 予測している。 一方、需要については、牛肉輸出を86万トンと予測している。内訳は、米国向 け輸出が、米国内の牛肉需給のひっ迫が継続すると予想されていることから、98 /99年度並みの28万7千トンとしている。また、日本向け輸出は、価格面などか ら米国産牛肉の手当てが難しくなることを受けて98/99年度を5%上回る33万ト ン、韓国向け輸出も順調な経済回復により同じく15%増の8万4千トンとしている。
97年から大幅に落ち込んでいた生体牛輸出は、経済回復しつつある東南アジア 向けに加え、新たな輸出先として力を入れている北アフリカ、中東向けを中心に 需要が高まるものとみており、98/99年度を12%上回る82万頭の輸出を見込んで いる。この結果、一部地域では、農家の肉牛保留傾向が強まる中、牛肉輸出と生 体輸出との間で、肉牛の取り合いによる供給不足が起き、豪州全体での生体出荷 価格は、kg当たり207豪セント(約145円:1豪ドル=70円)と、98/99年度を6 %程度上回るものと見込んでいる。生産農家にとっては、前年度に引き続き好結 果をもたらすことになるが、食肉処理加工業者にとっては、仕入れ価格の上昇に 伴うコストへの転化をどの程度に押さえられるか、生産性の向上などを含めた合 理化への対応が求められることとなる。
肉牛生体価格の上昇は、国内消費にも少なからず影響を及ぼすとみられており、 豪州国内の小売価格は、kg当たり10.28豪ドル(約720円)と98/99年度を4%程度 上回ると見込まれている。 豪州では、落ち込みつつある牛肉消費の拡大を図るため、豪州食肉家畜生産者 事業団(MLA)が中心となり、98〜2000年度において2,120万豪ドル(約14億8千 万円)を投じて消費キャンペーンを推進し、着実な成果を上げている。 しかしながら、予想される小売価格の上昇は、少なからず購買動向に影響を及 ぼすとみられ、オリンピックに伴う一時的な拡大は想定されるものの、国内消費 の低下が懸念されている。
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