◇絵でみる需給動向◇
99年12月17日に開催されたEUの牛肉管理委員会で、5,031.5トン(製品重量ベ ース)の牛肉介入在庫の売渡し(用途制限なし)が認められた。公式の統計は公 表されていないが、残る介入在庫は、わずか600トンに満たないとの見方もあり、 介入在庫はほぼ解消したものとみられている。 介入在庫は、牛海綿状脳症(BSE)問題が発生した96年3月以降、牛肉消費が一 時的に大幅に低下したことを受けて急増した。ピーク時の97年11月には62万7千 トン(枝肉換算ベース)に達したが、その後の牛肉消費の回復と数々の生産抑制 措置により、需給ギャップが徐々に解消されるのに伴い減少傾向で推移していた (左図参照)。
EU委員会が公表した直近データである99年5月末の介入在庫量(製品重量ベー ス)を国別に見ると、ドイツが全体の3分の1に当たる15万6千トンを占め、最大 となっている。以下、イギリス、アイルランド、フランスと続き、上位4ヵ国で 全体の約9割を占める。 介入買入れは、域内の牛肉需給バランスの改善に伴い、99年6月以降実施され ていない。加えて、輸出向けや加工向けなどへの介入在庫売渡しが順調に進んだ ことで、介入在庫量は99年後半に急速に減少したとみられる。 99年5月末の国別牛肉介入在庫 資料:EU委員会 注:数値は( )を除き製品重量ベース
こうした介入在庫の減少をもたらした要因の1つは、ロシア向け食料援助の一 貫として実施された牛肉の援助輸出である。EUとロシアは98年12月、食料援助 の了解事項に関する覚書の調印を行い、99年1月には援助物資に関する条件等に ついての覚書に調印した。これにより、小麦、ライ麦などのほか、15万トン (枝肉ベース)の牛肉が援助物資に盛り込まれた。援助物資としての牛肉の調 達は介入在庫から充当するとされたため、3月以降、ロシアへの食料援助向けの 入札が順次実施された。 99年3月に合意された共通農業政策(CAP)改革により、牛肉分野では、2002 年7月に一部を除いて介入買入れは廃止され、民間在庫補助に移行する。現在、 移行に向けた規定等の整備が進められているが、99年末で介入在庫がほぼ解消 したとみられることで、スムーズな移行に向けての前提条件の1つが整ったと言 える。
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