◇絵でみる需給動向◇
豪州農業資源経済局(ABARE)の発表(速報値)によると、98/99年度(7〜 6月)の生乳生産量は、1,017万8千キロリットルと過去最高を記録した。 好調な生産の背景には、経産牛1頭当たりの乳量の増加や輸出向け乳製品需要 の拡大に伴う経産牛頭数の増加はもちろんのこと、天候に恵まれ牧草の生育が十 分であったことが挙げられる。 乳製品の輸出について見ると、輸出量は海外市場からの需要の高まりにより年 々増加傾向で推移している。製品別には、チーズが日本向けを中心に増加してい るのに対し、脱脂粉乳、全粉乳は、東南アジア向けを中心に増加し、また、バタ ー類については中近東向けの増加が目立っている。 ◇図:生乳生産量および経産牛飼養頭数の推移◇ ◇図:主要乳製品の輸出動向◇
99年12月公表のABARE予測によると、経産牛の飼養頭数は、前年度とほぼ同様 の215万2千頭と予測している。これは、先日発表された長期予報により今後の気 象状況が比較的順調とされていることから、牧草の生育が前年度並みに良好と見 込まれること、また、飼料価格も引き続き低水準で推移すると予測されているこ とによる。この結果、生乳生産量も前年度をやや上回る1,058万2千キロリットル と、過去最高であった前年度に続き1千万キロリットル台を維持するとしている。 一方、加工向け生産者乳価は、豪州国内の酪農に関する規制緩和政策の実施に より平均して1リットル当たり21豪セント(約15円)と前年度を9%弱下回るとし ている。一部報道では、規制緩和政策の実施による酪農への影響として、州によ っては酪農家戸数が大幅に減少すると報じられており、状況によっては生産への 影響が心配される。
主要乳製品の生産については、バター、チーズ、全粉乳、脱脂粉乳ともに、い ずれも生乳生産の増加に伴い前年度を上回るとしている。中でも、脱脂粉乳、全 粉乳については比較的需要の伸びが高いとみられていることから、他の製品に比 べ増産意欲が高まっている。 製品別の生産量では、チーズについては、日本向けを中心に輸出が好調である ことから、99/2000年度は前年度を9.8%上回る34万5千トン、脱脂粉乳について は、通貨危機による経済低迷からの回復が目立つ東南アジア向け輸出の強化によ り15.9%増の27万トン、全粉乳についても同様に7.5%増の15万7千トン、バター 類については、近年、新たな輸出先として力を入れている北アフリカ、中東向け を中心に輸出が回復するものと見込んでおり、9.8%増の19万1千トンとしている。 本来、輸出が好調であれば生産者にとっても大きな見返りが期待できるが、ニュ ージーランドなど他の輸出国との競争により輸出価格は5%程度低下すると予測 しており、恩恵は得られそうにない。
飲用向けの生産者乳価については、平均して1リットル当たり52.3豪セント (約37円)と前年度を2%程度上回るものとしている。しかし、今年7月からの飲 用乳規制の撤廃に向けた動きが活発化する中、動向いかんによっては、飲用向け の生産者価格のみならず、小売価格への影響も想定される。 国内の乳製品需要は、チーズなど一部製品については外食産業の台頭により順 調に増加しつつあるが、バターや牛乳については、消費拡大キャンペーンなどに より一時的に需要が増加しつつあるものの、乳脂肪を敬遠する傾向により全体的 には年々低下しつつある。 今後予想される小売価格の上昇は、これら乳製品需給に少なからず影響を及ぼ すとみられ、全体的な消費の低下に一段と拍車がかかるものと懸念されている。
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