◇絵でみる需給動向◇
ニュージーランド・ナショナル・バンクの経済報告によると、98/99年度(6 〜5月)における乳業メーカー(酪農協)各社の生産者支払乳価(乳固形分ベー ス)について、利益還元を含めた最終調整が行われ、多少の増減はあったものの、 結果的には1社を除きいずれの乳価も前年度水準を上回ることとなった。 乳業メーカー(酪農協)別の生産者支払乳価 資料:「New Zealand Dairy Exporter」 注:乳固形分換算1kg当たりの価格
メーカー別の動向について見ると、UHT製品やクリーム、カゼインなど高付加 価値製品に特化し、新商品の開発などを推進しているタトゥアが、順調な業績を 反映してkg当たり0.11NZドル(約6円:1NZドル=56円)の調整による上乗せを行 い、最終的にkg当たり4.16NZドル(約233円)として7年連続首位の座を維持した。 また、タスマンもわずかながらではあるが当初乳価を上回った。 一方、NZDGなど大手メーカーを含めた他の乳業メーカー各社は、ウエストラ ンドのkg当たり0.30NZドル(約17円)を最高におおむね設定された乳価を下回っ ている。一部では、合併による組織の肥大化により経費が増加し、生産コストへ 波及したという見方も出ているが、当初設定された生産者支払乳価が、好調な乳 製品輸出を反映して比較的高めに設定されていたことや、また、乳業メーカーの 再編合理化に伴う施設の集約化等、新たな投資を踏まえた内部留保を進めたこと によるものと推察されている。 最終的な乳価における上位メーカーと下位メーカーとの格差は、kg当たり0.68 NZドル(約38円)となり、前年度の0.53NZドル(約30円)からさらに広がり、 メーカーごとの優劣が表れてきた。 現地の新聞報道では、生産者支払乳価が0.1NZドル(約6円)上昇すると、組合 員である酪農家の収入は平均して4千NZドル(約22万円)増加するとされており、 組合員として所属する乳業メーカーにより酪農家の明暗が分かれる形となった。
ニュージーランドの生産者支払乳価は、乳製品輸出を一手に扱うニュージーラ ンド・デイリー・ボード(NZDB)の支払う乳価(基本乳価)に、乳業メーカー 各社の利益還元を上乗せしたもので、メーカーの経営状況によってそれぞれの乳 価が異なる。ちなみに、98/99年度のNZDBの基本乳価は、乳固形分kg当たり3. 25NZドル(約182円)と前年度を8.3%上回り、乳製品の国際市況が全体的に弱含 みで推移する中で、為替相場や輸出先のニーズをうまくとらえた販売戦略が反映 される形となった。 先進国を中心とする乳脂肪摂取の低下や、東南アジアなどを中心とした脱脂粉 乳需要の高まりなど、それぞれのニーズに対応するための生産・輸出を行うこと は、バター等脂肪製品の供給過多を招くことにつながり、結果的に安定的経営に つながらない。ニュージーランドはこのような状況を踏まえ、生産・輸出戦略の 一環として全粉乳やチーズなど牛乳全体を使う製品への転換を進めている。
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