EUの豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○豚枝肉卸売価格、前年を上回るものの依然低迷



過去5年の平均に比べ10%安

 99年11月のEU15ヵ国の豚枝肉卸売価格(市場参考価格、以下「豚肉価格」とい
う。)は、前年同月比26.1%高の112.7ユーロ/100kg(118円/kg:1ユーロ=105
円)となった。豚肉価格は、99年7月以降、記録的な暴落となった前年を上回っ
て推移しているものの、EU委員会がロシア向け輸出補助金の引き下げおよび民間
在庫補助(APS:Aid for Private Storage)の発動解除を相次いで打ち出した9月以
降、低下を続けている。12月(第2週までの平均)には、同17.4%高の114.9ユー
ロ/100kg(121円/kg)と前月からわずかに上昇した。ただし、過去5年間の平
均と比較すると、その差は縮小したものの依然10%安と低い水準にある。

◇図:主要国の豚枝肉卸売価格◇


APS在庫の放出も懸念材料の1つ

 最近の豚肉価格の動向に対しては、回復基調にあるのかどうか評価が分かれて
いる。本格的な価格回復が遅れているとする見方は、主として豚肉生産が依然高
水準で推移していることを要因として挙げているほか、APSの発動が解除された
ことによる在庫放出も無関係ではないとしている。APSは、豚肉価格がEU委員会
により毎年定められる基本価格の103%を下回り、この状況が続くと見込まれる
場合に発動され、一定期間、豚肉を保管する取引業者に対し助成金が支払われる。
今回は、98年9月28日から発動され、99年9月17日に解除された。発動解除後にお
いては、APSの下で新たに豚肉が在庫されることはなくなる一方で、APSによる
在庫期間が終了すると豚肉在庫のほとんどが市場に放出されると見込まれる。EU
委員会では、2000年2月まで、毎月約2万トン(製品重量ベース)が市場に放出さ
れると推定している。

APSからの豚肉放出量の見込み
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 資料:EU委員会


EU委員会は、静観の構え

 こうした状況の中、11月15日に開催された農相理事会では、加盟各国からロシ
ア向けの輸出補助金を再度引き上げるよう要求が出された。EUのフィシュラー農
業担当委員は、9月以降の豚肉価格の低下は周年的な季節要因によるもので、近
々に価格は回復すると主張した。理事会の結論としては、新たな豚肉の価格支持
策は提案されず、今後も豚肉価格の動向を注視していくとされた。しかし、これ
以後も大幅な価格低下がない限り、何らかの対策が提案されることは期待できな
いものとみられている。

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