99年の農業収入、前年比4%減少(EU)


アイルランドなど12ヵ国で減少、増加は3ヵ国のみ

 EU統計局(EUROSTAT)は、このほど99年の農業収入見込み(暫定値)を公表
した。これによれば、EU15ヵ国全体の実質農業収入(名目データを国内総生産
価格指数で修正したもの)は前年に比べ4%減少と推定されている。

 各国別に見ると、12ヵ国で減少し、中でも、家畜価格の下落の影響を大きく受
けたアイルランドおよびデンマークで特に減少幅が大きく、10%以上の減少とな
った。以下、スペイン、ベルギー、オランダなどと続いている。一方、農業収入
が増加したのは、穀物生産が増加したポルトガルのほかスウェーデン、ルクセン
ブルグの3ヵ国のみだった。

◇図:99年実質農業収入の前年比◇


実質農産物価格は前年比5%安、特に畜産物価格の低下が顕著

 99年の実質農産物価格は、前年に比べ5%低下した。これを品目別に見ると、
畜産物価格では6%低下した。このうち、豚価格は、98年以来の生産過剰で10%
低下した。鶏肉および鶏卵価格は年初の生産過剰とダイオキシン汚染問題でそれ
ぞれ8%、10%下落した。牛および牛乳価格も低下している。

 また、作物価格も4%低下した。このうち、油糧種子(22%安)および果物(8
%安)の価格低下が大きかった。ジャガイモ価格(13%安)も雨で高騰した98年
に比較し、大きく低下した。生鮮野菜、ワイン価格も低下したが、穀物価格は前
年並みだった。


農産物生産量、前年比1%増のわずかな増加にとどまる

 99年の農産物生産量は、前年に比べ1%増加した。国別では、ポルトガル(17
%増)の増加が最も大きく、ベネルクス諸国(各4%増)、オーストリアおよび
フィンランド(各3%増)も増加した。一方、スペインは5%減少した。

 畜産物生産量は、EU15ヵ国全体および大半の国で前年並みだった。例外は3%
増加したスペイン(豚が6%増、牛乳が4%増)と2%減少したイギリス(牛と鶏
肉が各3%減、豚が8%減)である。

 EU全体の牛肉等の生産量は98年には減少したが、99年は前年並みと見込まれて
いる。オーストリア(5%増)とフランス(3%増)で増加する一方、5ヵ国(デ
ンマーク、ルクセンブルグ、オランダ、フィンランド、イギリス)では減少と見
込まれている。

 豚肉等の生産量はEU全体で引き続き増加した(1%増)。ルクセンブルグで22
%増加、スペインは6%増加と見込まれている。一方、イギリスでは8%減少と見
込まれている。

 牛乳と鶏卵の生産量は減少と見込まれている。

 作物については、穀物生産量は作付面積の減少を背景に6%減少した。ただし、
天候に恵まれたポルトガルでは穀物生産が17%増加した。穀物以外の作物生産量
は増加した。このうち、油糧種子の生産量は作付面積の拡大により6%増加、ジ
ャガイモは生産の落ち込んだ前年の反動で12%増加、果物は霜の被害が小さく9
%増加、ワインも7%増加した。


実質農産物生産額、前年比4%減少

 農産物生産量が微増したものの、実質農産物価格の低下により、99年の実質農
産物生産額は前年に比べ4%減少した。

 また、肥料・飼料価格およびエネルギー価格の低下により、生産資材コストは
2%減少した。補助金は2%減少、税金は1%減少となり、以上から、費用に対す
る純付加価値(利益)は6%減少した。なお、農業労働力は3%減少した結果、実
質農業収入(純付加価値÷労働力)は4%減少と推定されている。

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