EU委員会、農業補助の新たな指針を発表


既存の指針を体系化かつ単純化

 EU委員会は11月24日、加盟国が実施する農業補助に対して、これまでばらばら
に適用されてきた多数の規則等を体系化、単純化した新たな指針を採択・発表し
た。共通農業政策(CAP)改革の内容が指針に盛り込まれたが、EU委員会は、今
回の指針により、市場価格支持制度や農村開発計画などのCAPおよび世界貿易機
関(WTO)農業協定などの国際規律に則した農業補助を各国に徹底し、EU共通政
策の円滑な推進を図るとしている。

 同指針は、2000年1月以降に導入される各国の新たな農業補助に対して適用さ
れる。現在の補助計画の下で既に行われている補助については、同指針の適用対
象外となるが、各国は1年以内(猶予期間)に補助計画を同指針に沿うように調
整しなければならない。 

 なお、欧州裁判所によると、農業補助は特定の経済活動または特定地域の発展
に資するものでなければならず、単に補助対象者の経済状況改善に資するだけの
補助はEU条約に合致するものとは認められないとされている。


農場の投資に対する補助上限は40%

 同指針で認められた補助の概要は、以下の通りである。

1 農場の投資に対する補助

 補助の上限は原則として適用対象となる支出額の40%とする。ただし、在来の
景観保持に資する投資、公共利益のための農場建物移転投資または環境・動物愛
護・衛生改善のための投資については、より高率補助を認める。

2 農産物加工・流通の投資に対する補助  

 当該農産物について一般の市場販路が存在する場合であって、補助の上限は原
則として40%(開発の遅れた地域における開発促進および構造調整に係る投資補
助については50%)とする。

3 環境保全に資する農業活動への見返りとしての補助およびその他の環境に関
 する補助

4 条件不利地域におけるハンディキャップを補償するための補助

5 若年農業者就農支援のための補助

6 早期離農、農業活動の中止または生産・加工・流通施設の閉鎖に対する補助

7 生産者団体の設立に対する補助

8 自然災害、不測の事態、悪天候、動植物の病気の発生に伴う農産物生産・生
 産手段の損害補償に対する補助、またはそうした危険へ備える保険への加入促
 進のための補助

9 高品質農産物の生産・流通促進、生産者への技術支援および家畜の遺伝的育
 種改良への補助

10 EU域外と接する国境地域およびエーゲ海諸島の特定の支援に対する補助



農産物の販売促進および宣伝については、新たな枠組みを検討中

 なお、本指針で言及されているのは、主にCAPにおける農村開発援助に関す
る補助であり、EUの認める補助のすべてをカバーするものではない。

 すなわち、この指針の他のEU委員会規定に沿った補助(研究開発、短期融資、
経営困難な農家の救済・再建および雇用支援への補助)も認められている。さら
に、現在、EU委員会では農産物の販売促進および宣伝についての新たな枠組み
を検討中である。

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