課題山積の中、新農牧水産食糧庁長官を任命(アルゼンチン)


新農牧水産食糧庁長官は、急進党議員ベロンガライ氏

 昨年10月に実施されたアルゼンチン大統領選挙で、政権交代を果たしたデ・ラ
・ルア新大統領は、12月13日、新農牧水産食糧庁長官として、ラパンパ州選出の
急進党議員アントニオ・ベロンガライ氏を任命した。

 同氏は、自らラパンパ州で食肉処理加工場を所有する肉牛生産者でもある。最
近まで超党派の農業検討委員会の議長を経験するなど農業問題全般に精通してい
ることから、農業団体などは同氏の農政
手腕に大きな期待を寄せている。

 農畜産品衛生事業団(セナサ)では、口蹄疫や小麦の問題で昨年来日したバル
コス総裁に代わり、獣医のオスカル・ブルニ氏が就任した。同氏はアルフォンシ
ン政権時(83〜89年)のセナサ総裁で、当時の口蹄疫対策の中心人物でもあった。


新政権、省庁の機構改革に着手

 デ・ラ・ルア新政権は、既に省庁の機構改革に着手している。農牧水産食糧庁
の関連では、以前3つあった副庁が農牧漁業食糧副庁(仮称)1つに統合され、廃
止された2つの副庁に代わり顧問職と国家部長職を充実させている。以前、ベロ
ンガライ上院議員のアドバイザーであったホルヘ・カセナベ氏が新しい副庁の次
官に任命された。

 農牧水産食糧庁については、この国の農業セクターの重要性から、庁から省へ
の格上げ問題が出ている。これについて、農業4団体は後押ししているが、上部
組織の経済省(旧経済公共事業省)は難色を示している。


最優先課題は、負債問題と穀物価格の下落に対する融資対策

 新長官は就任後、早速、農業負債問題と穀物価格下落に対する農業融資対策を
最優先で取り組んだ。

 負債問題は、91年の兌換(だかん)法導入以来、農業者は高金利で国立銀行か
ら融資を受けたが、結局、借金が返せないばかりか金利がかさみ、同銀行が担保
に取っている膨大な優良農地など不動産の競売を迫られているというものである。
新長官は競売を今年4月まで延ばし、その間に個々の負債案件を調査・整理し、
必要な農家支援を行うことを決定した。

 また、穀物価格の下落に対する対策については、小麦生産者に対し融資額1億
ドル(104億円:1ドル=104円)、政府の利子補給3%で生産者負担10.5%で融資
することを国立銀行と協議の上、合意した。これにより、農業者は穀物価格が持
ち直すまで穀物の取引自体を延ばせるようになった。


新長官の農政手腕に注目

 このほかにも、生産者のストライキにまで及んだ2つの新税への対応、訴訟問
題に発展しているヒルトン枠の配分、牛肉振興協会の将来像、危機的状況にある
酪農セクター支援、食品などの衛生規定の改正など、農業予算のあり方自体も問
題となる中で課題が山積されている。このような厳しい状況の中で、新長官がど
のように手腕を発揮するのか注目されるが、困難な船出となりそうである。

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