手探りを続ける加工貿易の新管理制度(中国)


加工貿易が輸出拡大をけん引

 中国の国際貿易が本格的に力をつけ、発展し始めたのは、79年の改革開放政策
以降とされている。70年代後半、中国は経済のさらなる発展を求め、アジアの新
興工業経済地域(NIES)にめざましい経済成長をもたらしていた加工貿易を推進
し、税制面でも優遇措置をとるなどの政策を採用した。その後、加工貿易は、80
年代における外資の直接投資の本格化などとも相まって、特に労働集約型の外資
系企業における貿易形態として定着し、中国の貿易規模は急速に拡大した。

 当初、輸出総額に占める加工貿易の輸出額は3割弱しかなかったが、98年にお
ける加工貿易の輸出額は、79年の約450倍に当たる約1,045億ドル(約10兆8千億
円:1ドル=104円)で、輸出総額に占める割合は56.9%に達した。しかし、一方
では、内外価格差と人民元の切り下げ不安を背景に、ここ数年、加工貿易を悪用
した密輸や輸入原材料の横流し、貿易仕向けの加工製品の国内への違法販売など
も増加した。これらの違法行為は、単に国家の税収を減少させるだけでなく、国
内市場の需給バランスを崩し、国内産業にも深刻な影響を及ぼすこととなった。


99年10月から新管理制度へ移行

 加工貿易の健全な発展が大きな課題となった中国では、95年11月27日から蘇州
(江蘇省)、寧波(浙江省)、東莞(広東省)の3市で、試験的に加工貿易銀行
保証金台帳制度が導入された。この制度は、加工貿易を営む企業が、輸入原材料
の関税および増値税(付加価値税)に相当する保証金の台帳開設を中国銀行(国
有の外国為替取扱銀行)に申請するもので、加工製品が期限内にすべて輸出され
たことを税関が確認した後、保証金台帳は抹消される。ただし、この制度では実
際の保証金の徴収はなく、単なる記録のみであった。同制度の実施は、96年4月
1日から25地区に、さらに同年7月i1日からは全国に拡大された。

 99年になると、この制度の運用強化のため、中央政府は加工貿易に関係する企
業や商品を分類管理し、違法行為のあった企業から実際に保証金を徴収(6ヵ月
分を一括徴収)するなどの新管理制度を、同年6月1日から実施すると発表した。
しかし、保証金納付が経営圧迫につながるとして、香港の貿易企業などを中心に
反発があったことや、突然の発表で地方政府の準備が整っていないなどの理由か
ら実施が延期され、99年10月1日からの施行となった。

 この新管理制度で、加工貿易に関する商品は「禁止類」、「制限類」、「許可
類」に、また、加工貿易関係の企業は違法行為の有無などでA〜D類に分類され
た。その概要は次の通りである。

表1 加工貿易の新制度における商品別・企業別分類
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表2 加工貿易の新管理制度における分類管理
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新制度をめぐり各地で混乱

 新たな加工貿易管理制度に対し、香港の業界団体などは、輸入価格の3〜4割
にもなると言われる保証金の積み立てが企業の資金繰りを悪化させ、操業停止に
追い込まれるなどの懸念もあるとして、関係機関に対し保証金徴収法の見直しな
どを再三にわたり要請した。また、税関への申告回数が膨大に上る大手企業など
は、書類記入の際の単純ミスが違反に数えられてC類に分類されたケースも少な
くないとされる。さらに、上海市や広東省では、保証金納付免除の対象としてA
A類という区分を設け、A類企業でも、制限品目を扱う場合は保証金納付を義務
付けるという独自の運用を導入するなど、新制度をめぐって各地で混乱が生じた。

中央政府は見直しを検討、2000年1月から施行

 こうした混乱を受け、中央政府は制度の見直しを検討し、99年12月20日に見直
しの結果が税関公告で発表され、2000年1月1日から施行された。関係者によると、
今回の見直しの内容は、@広東省など一部の地域で独自に制定されていたAA類
はすべてA類に統一し、A類企業からは保証金を徴収しないことを改めて確認す
るとともに、A罰金が1万元以下の場合は、C類企業への分類査定の参考としな
いこと、B年間2回以上の違反行為があっても、違反回数が前年の通関回数の0.1
%を超えない場合はC類企業に分類しないこと、Cこれまで98年8月1日以降とさ
れていた、税関の初期段階での分類査定に用いられる違反計算期間を、99年6月
1日以降とすることなど、C類企業に対する分類基準の緩和も含まれている。ま
た、これと併せ、当局は企業分類を再検討することも示唆している。しかし、保
証金の納付方式に幅を持たせ、金銭以外に銀行保証や不動産などの担保提供によ
る方法の導入は見送られるなど、加工貿易の新管理制度は、今しばらく手探りの
状況が続きそうである。

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