価格の下落が続く鶏肉・豚肉を調整保管(タイ)


輸出不振と消費減退により供給過剰に

 このところタイでは、供給過剰などにより、鶏や豚の価格が下落している。タ
イにおける最近の鶏肉輸出は、98年に大幅な増加を見せたものの、99年はし烈な
輸出競争により輸出価格が大幅に下落し、同時に輸出量も伸び悩んでいる。この
ため、これまで輸出に向けられていたものの一部が国内に出回り、供給過剰への
可能性が指摘されていた。また、豚肉は、経済回復により消費者の購買力の高ま
りが見られるものの、鶏肉に比べ依然として割高感があること、衛生問題などで
消費者が敬遠していることなどから消費が回復せず、当分の間、低価格が続くも
のと見込まれていた。

99年下半期からブロイラーの価格が低迷

 生きたブロイラー1kg当たりの農家販売価格は、98年は生産量が前年比18.5%
増であったにもかかわらず、輸出が好調に推移したことなどから、同17.1%高の
30.5バーツ(約84.5円:1バーツ=約2.8円)と過去最高を記録した。また、99年
1〜7月までは、輸出の伸び悩みが見られたものの、1〜6月までの生産量が前
年同期を下回ったため、30バーツ(約83.1円)前後で安定的に推移した。

 しかし、7月および8月の生産量がそれぞれ前年同月比3%を超えたことなど
から、一転して供給過剰となり、8月以降の農家販売価格は20バーツ台前半まで
下表のように急落した。

 また、バンコク市場における生きたブロイラー1kg当たりの卸売価格も、8月は
前年同月比28.8%安となる25.3バーツ(約70.1円)まで低落し、それ以降は下表
のとおり推移している。さらに、ピーク時に13バーツ(約36.0円)であったひな
1羽当たりの価格も8月以降下落が続き、10月は3.5バーツ(約9.7円)まで急落し
ている。

タイにおける最近のブロイラー価格の推移
kakaku.gif (2832 バイト)
 注:9月は週速報値の平均、10月は第2週までの平均値


豚価も軒並み下落

 一方、経済の停滞による需要低迷で下落していた豚価も、生体重が100kgを超
える豚1kg当たりの農家販売価格(全国平均価格)およびバンコク市場における
同卸売価格(生体)が、99年5月にはそれぞれ48.2バーツ(約133.5円)および49
.3バーツ(約136.6円)とピークに達していた。しかし、6月以降になって下落を
始め、9月には農家販売価格が39.1バーツ(約108.3円)、卸売価格が40.4バーツ
(約111.9円)、10月にはそれぞれ34.7バーツ(約96.1円)および36.8バーツ(約1
01.9円)と急落した。

 また、チャロン・ポカパン(CP:タイの巨大農業関連産業)が販売する子豚の
価格は、ピーク時には1,500バーツ(約4,155円)であったが、10月になると半値
以下の600バーツ(約1,662円)にまで落ち込んだ。


価格回復のため、調整保管を実施

 このような中、政府の閣僚などが委員となっている農家援助委員会では、これ
らの食肉の価格回復を図るため、9月末に開催した委員会で、市場から食肉を隔
離することに要する経費の支出を決定した。ブロイラーについては、卸売価格を
回復させるため、養鶏振興協会などが99年10月から2000年9月までの間、輸出向
け鶏肉3,500トンを市場から隔離保管する経費などとして、3億バーツ(約8億
3千万円)が予算化されている。また、豚についても、卸売価格の回復のため、
関連業者が実施する豚肉の保管経費などとして、2億2千5百万バーツ(約6億2千
万円)が予算化されている。この調整保管の実施に対し、業界は食肉消費が回復
するまでのつなぎの緊急策として、その効果に期待を寄せている。

元のページに戻る