USDA、食肉に対する放射線照射最終規則を発表(米国)


食中毒の抑制に膨らむ期待

 米農務省(USDA)は99年12月14日、食肉および家きん肉に対する放射線照射
の最終規則を発表した。今年2月22日以降、冷蔵・冷凍の非調理食肉、食肉副産物
およびソーセージなどの特定の食肉製品に対する放射線照射が認められることと
なり、食中毒の原因となる病原菌の抑制、シェルフライフの延長などが期待され
る。

 放射線照射は、現在、生の食肉中に存在する致死性の腸管出血性大腸菌O157
を取り除くことのできる唯一の手段として知られている。加えて、リステリア菌、
サルモネラ菌、カンピロバクター、トキソプラズマなどを抑制するとされている。

 放射線照射については、米保健社会福祉省食品医薬品局(FDA)が、85年に豚
肉内の旋毛虫の不活化を目的として認可している。また、家きん肉に対しては、
USDAが92年にサルモネラ菌などの病原菌の抑制を目的として、放射線利用のガ
イドラインを認可している。畜産物以外でも、63年以降、香辛料内の昆虫や微生
物の抑制、野菜、果実などの劣化の抑制を目的として、放射線の照射が認可され
ている。

 しかしながら、その利用実態を見ると、豚肉については全く利用されておらず、
家きん肉についても、93年から一部の食品会社が特定の市場向けに利用を開始し
ているにすぎない。

 その後、消費者の食品の安全性に対する関心が高まる中、業界からの要請を受
けて、FDAは97年12月、病原性微生物を抑制するため、食肉に対する放射線照射
を認可すると発表した。放射線照射の実際の利用に際しては、USDA食品安全検
査局(FSIS)の認可に加え、同局による工場内での放射線の利用方法に関するガ
イドラインの作成が必要となっている。このため、USDAは99年2月、食肉および
家きん肉に対する放射線照射の最終規則案を発表した(詳細については、本誌99
年4月号「トピックス」参照)。USDAによれば、この最終規則案に対しては、1
,100件以上ものコメントが寄せられたとしている。


放射線照射の表示を義務付け

 今回公表された最終規則によれば、放射線の最大吸収線量はFDAの公表した最
終規則と同値であり、冷蔵食肉が4.5キログレイ、冷凍食肉が7キログレイとなっ
ている。家きん肉については、同様に3キログレイとされるとともに、放射線照
射される家きん肉の包装容器は、空気透過性でなければならないとされている。

 また、消費者に選択の裁量を与えるため、USDAは、放射線照射済みの食肉な
どには、国際シンボルであるロゴの添付および放射線照射済みである旨の表示が
必要であるとしている。
【放射線照射された旨のロゴ】

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業界は食肉加工品への適用拡大を期待

 このようなUSDAの発表を受けて、米国食肉業者の団体である米国食肉協議会
(AMI)のボイル会長は、「消費者と食肉業界が長い間待ち望んでいた日がやっ
てきた」と歓迎の意を表明した。さらに、会長は、AMIが99年8月に食肉加工品
及び家きん肉製品に対しても放射線照射の認可を申請しているが、それらに対す
る適用が除外されたことから、「ホットドッグやランチョンミートなどの食肉加
工品は対象となっていない」として、その適用範囲が早期に拡大されることへの
期待を示した。なお、放射線を照射する場合には、危害分析重要管理点監視方式
(HACCP)の下で、実施・運用されることとなる。

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