◇絵でみる需給動向◇
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、99年(1〜12月)の生体牛輸出 は、前年を35.6%上回る84万1千頭となった。 東南アジアを主な輸出先とする豪州の生体牛輸出は、90年代において一貫して 拡大傾向にあったが、97年のタイの通貨危機を発端とするアジア経済低迷の影響 を受け、98年には輸出頭数が大幅に減少した。しかし、東南アジアの経済回復と エジプトなどの新たな輸出市場の拡大に伴い、99年前半から、輸出頭数も回復の 兆しを見せ始め、年間を通じても前年に比べ増加基調で推移した。99年の輸出実 績は、最高を記録した97年の水準の8割近くまで迫ったことから、豪州生体牛の 輸出力は回復したと言える。 ◇図:生体牛輸出頭数の推移◇
99年の生体牛輸出を国別に見ると、最大の輸出先は、強い需要と比較的安定し た通貨ペソに支えられたフィリピンで、輸出頭数全体の約3割を占め、前年比24 .3%増の26万8千頭と、過去最高の輸出を記録した97年に近い水準となった。次い で、順調な経済成長により近年大幅に生体牛輸入を増しているエジプトである。 なお、エジプト向け輸出増加の背景には、リビアが豪州産生体牛の取引を中止し た99年初めから急速に増加しているため、その隣国であるエジプトを経由した動 きもあるのではないかといわれている。そのほか、インドネシア、マレーシアの 増加が目立っている。なお、最近では中国のフィードロットへの輸出契約も結ば れており、新たな巨大市場の誕生も期待できる。 ◇図:生体牛輸出頭数の国別内訳(99年)◇
順調に推移しているように見える生体牛輸出であるが、いくつかの課題も抱え ている。 第1に、国内での牛群の再構築による素牛の減少とそれに伴う価格の高騰であ る。第2に、東南アジア、特にフィリピンとの貿易問題である。豪州生体牛にと って最大の輸出先であるフィリピンは、同国産果実の検疫問題に対する報復措置 として、豪州の生体牛の輸入許可遅滞措置をとった。その後、両国とも主張を曲 げず、世界貿易機関(WTO)へ提訴する構えを見せており、この貿易問題が、重 要な輸出先であるほかの東南アジア諸国へ飛び火することも懸念されている。第 3に、市場の拡大を図っている北アフリカ・中東向けでは、今後、エジプト以外 の国への輸出も増やせるかが課題となる。 これらの課題を解決することが、さらなる生体牛輸出の拡大を図るためには必 要である。
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