タイの鶏肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○1〜4月の鶏肉輸出、アジア向けが伸び悩む


1〜4月の鶏肉輸出、前年同期比12.1%の増加

 タイブロイラー加工輸出業者協会が公表した今年1〜4月の鶏肉輸出量(速報値)
は9万4千トンとなり、前年同期比で12.1%増加した。

 形態別では、冷凍鶏肉が7万1千トンで同8.3%増、鶏肉調製品が2万3千ト
ンで同25.9%の増加となっており、特に鶏肉調製品輸出は年初から好調が続いて
いる。また、地域別に見ると、全体の約7割を占めるアジア向けが6万5千トンで
同9.7%の増加であったのに対し、約3割を占めるEU向けは2万8千トンと同18%増
加しており、EU向けの伸びが全体を底上げする傾向が続いている。


明暗を分けるアジア・EU向け輸出

 次に輸出国別に見ると、アジア向けの8割を占める日本への輸出は前年同期比
6.7%増の5万3千トンとなり、総輸出量に対するシェアは、前年同期の59.0%から、
今年は輸出の伸び悩みにより56.2%へ落ち込んだ。また、中国向けは前年同期比
で22.7%の減少となったほか、自給力を高めるべく政策転換が図られつつあるマ
レーシア向けでも同16.7%減と減少傾向が続いており、アジア向け輸出の伸び悩
みに拍車をかける状況となっている。

 これに対しEU向けは、主要輸出先であるドイツ、オランダ、イギリス向け(3
ヵ国でEU向け全体の97%を占める)が、それぞれ20%前後の大幅な伸びを記録し
ている。

◇図:鶏肉の月別・地域別輸出数量◇


輸出価格の低迷にあえぐ鶏肉業界

 一方、好調な輸出数量の動向とは裏腹に、タイの鶏肉業界は近年の輸出価格の
低迷にあえいでいる。今年1〜4月における輸出額は75億6百万バーツ(約210億円
:1バーツ=約2.8円・タイブロイラー加工輸出業者協会推計値)で、前年同期比
5.4%の増加にとどまった。今年第1四半期の冷凍鶏肉の日本向け輸出価格は1ト
ン当たり1,500〜1,600ドル(約16万4千円〜約17万4千円:1ドル=約109円)とな
り、前年同期の1,900ドル(約20万7千円)と比較すると大幅に低下して、この2
年間で最低水準となった。同様にEU向けも、2,000ドル(約21万8千円)から
1,600ドル(約17万4千円)へと大幅に下落している。業界関係者は、これらの要
因を、日本市場に関しては昨年1月に通貨レアルを切り下げたブラジルの輸出攻
勢、EU市場に関しては構造的な供給過剰とみているが、長引く輸出価格の低迷
に対処するため、鶏肉業界では政府に対して、生産コストに大きく影響するトウ
モロコシや大豆かすなどの輸入関税の引き下げを要求している。

高付加価値製品で競合国との差別化を図る

 総輸出量の過半を占める日本向けなどに対するブラジル産鶏肉への対抗手段と
して、タイの鶏肉輸出業者の間では、加工度が低い鶏肉部門での競合を避け、よ
り付加価値が高い鶏肉調製品を製造・輸出することによって、競合国とのすみ分
けを図る気運が見られている。なお、今年1〜4月の鶏肉調製品の輸出シェアは24
.0%となり、前年同期と比較して2.6ポイント増加している。

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