◇絵でみる需給動向◇
EU統計局の資料によると、99年12月末のEU15ヵ国における乳用経産牛頭数は、 2,113万頭と前年を1.6%下回った。 全般的な傾向としてEUの酪農は、各加盟国とも酪農家戸数が減少しつつある中、 経産牛頭数が減少傾向で推移している。一方、生乳生産は、家畜改良に伴う1頭 当たり乳量の増加と飼養規模の拡大によりわずかながらも増加しつつある。 ◇図:酪農家戸数および1戸当たり経産牛飼養頭数の推移◇
飼養動向を国別で見ると、減少が最も著しかったのはドイツで、464万4千頭 (前年比4.0%減)と、前年に比べ19万4千頭もの減少を見せている。また、フラ ンスは433万9千頭(前年比1.8%減)と同じく7万7千頭の減少となった。この2ヵ 国の飼養規模は、EU全体の乳用経産牛飼養頭数の4割に当たるため、域内全体の 飼養動向に与える影響は大きい。さらに、イギリス、オランダなど主要酪農国で の減少が目立っている。 一方、反対に増加を見せたのは、酪農家からの強い要求に伴い2000年4月から 生乳生産割当(クオータ)が拡大されたイタリアで、213万5千頭(前年比1.2% 増)と、前年に比べ2万5千頭近い増加となった。また、イタリア同様、乳製品消 費の拡大が伝えられるスペイン、ギリシャなど南欧加盟国での増加が注目される。 これら国々での経産牛1頭当たりの平均乳量は、3〜4千キロ台とEUの中でも特に 低く、高まる需要を満たすためには、経産牛頭数の確保が必要不可欠である。 ◇図:経産牛頭数および1頭当たり乳量の推移◇
EUの共通農業政策(CAP)改革では、クオータは2005年度(4月〜3月)から20 07年度に加盟国へ0.5%ずつ、合計1.5%の増枠が行われる。ただし、イタリア、 スペイン、ギリシャ、アイルランドおよびイギリス(北アイルランド向け)につ いては、今年度と来年度でこれを上回る増枠が行われたため、総計で2.4%の増 枠(全体で約1億2千万トン)となる。このため、生乳生産については、当面、増 加基調となり得る枠組みは用意されている。 一方、EUの乳用経産牛飼養頭数については、クオータの増加にもかかわらず、 主要酪農国を中心に酪農家戸数の減少による頭数減が規模拡大による頭数増を上 回るスピードで進行しているため、全体的には引き続き減少傾向での推移が見込 まれる。
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