◇絵でみる需給動向◇
生乳価格が低迷する中、生乳生産の増加が続いている。米農務省(USDA)に よると、生乳農家販売価格(飲用向け乳価と加工原料向け乳価の加重平均)が99 年12月の急落以来、100ポンド当たり12ドル(29円/kg:1ドル=109円)前後で 低迷する一方、生乳生産量は、1頭当たり乳量および経産牛頭数の増加から前年 を上回って推移し、2000年1〜4月では前年同期比4.7%増の2,590万トンとなった (左図参照)。
経産牛頭数の伸びを地域的に見ると、増加傾向で推移してきた西部のみならず、 インディアナ州はじめ中西部でも急増するなど、近年にない展開となっている。 インディアナ州の場合、99年に近代的な大規模経営が他州から相次いで移転して 以来、増頭ペースが著しく、2000年3〜4月の生乳生産量の伸び率は主要20州で最 高となった。ほかにもカンザス州で経産牛3万頭規模の新規経営が出現するなど、 広大な土地、豊富な飼料、高い飲用乳価が期待できる消費地へのアクセスという 利点から、中西部を中心に、他州からの経営の移転、規模拡大や新規参入が目立 っている。
このような新興地域への移動あるいは規模拡大を含めて、既存の酪農経営の多 くは、98〜99年にかけて高収益を享受したことから、現下の乳価水準であっても 経営の維持が可能となっている。これが、低迷する乳価に生乳生産が反応しない 主な要因として挙げられる。また、新規参入に代表されるように、設備投資を行 って日の浅い経営は、収益よりも稼働率の向上を重視する傾向にあることも、減 産に転じない一因とみられる。こうした経営は、順調な乳製品需要に支えられ、 価格の低迷を出荷量の増加で補うという薄利多売的手法によって強気の展開を行 っているとされる。 ◇図:経産牛頭数の推移◇
USDAでは、経産牛頭数は、低迷する乳価に耐え切れず、廃業に追い込まれる 経営が中小規模を中心に現れることなどから、今後は減少傾向に転じるものの、 2000年平均では前年水準を維持すると見込んでいる。また、1頭当たり乳量は、 穀物価格が依然低水準であるうえ、アルファルファなどの粗飼料供給が潤沢であ ることから、前年同様3%程度増えるとしている。こうしたことから、2000年通 年の生乳生産量は、7,590万トンと前年を2.9%上回り、2001年についてもほぼ同 じ水準を維持すると分析している。 ◇図:生乳生産料の推移◇
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