◇絵でみる需給動向◇
EU統計局は、99年11/12月期におけるEU域内の豚飼養頭数調査結果を発表し た。これによると、EU15ヵ国の豚飼養頭数は、主要生産国を中心とする繁殖用雌 豚頭数の減少を反映して、肥育豚頭数が減少に転じたため、前年同期に比べ0.8% 減の約1億2,427万頭となり、96年11/12月期の調査開始以来初めての減少となっ た。 減少に転じた背景には、96年3月に再燃した牛海綿状脳症(BSE)問題による代 替需要が一段落したこと、また、98年末〜99年初めにかけての記録的な豚肉価格 の低迷が域内養豚農家の増頭意欲を消沈させたことなどがある。さらに、養豚を 取り巻く環境問題の高まりも挙げられる。 99年11/12月期のEU豚飼養頭数 資料:EU統計局
EUの豚総飼養頭数の7割を占める上位5ヵ国を見ると、スペイン、フランスで増 加となったが、ドイツ、オランダ、デンマークで減少し、全体で前年同期比0.34 %増にとどまった。 EU最大の豚肉生産国であるドイツでは、豚肉価格の低迷が影響し2,579万頭と前 年同期と比べ1.9%減少した。また、第5位でEU最大の豚肉輸出国であるデンマー クも、輸出補助金による域外への輸出を増加させたことが飼養頭数減少に大きく 影響している。 一方、第2位の生産国であるスペインでは、昨年に引き続き安価な飼料供給やお う盛な国内消費に支えられ、前年同期比4.8%増の2,260万頭とEU15ヵ国の中で最 大の伸びを示し、ドイツに肉薄する勢いで推移している。また、第3位のフランス では、順調な国内消費などが要因として挙げられる。
繁殖用雌豚頭数については、総飼養頭数同様、全体で前年同期比2.4%減の1,2 68万頭とイタリアなどを除き減少となった。 EU統計局は、2000年の生産頭数について、スペイン、デンマークで増加するも のの、イギリスをはじめ多くの加盟国で生産に落ち込みが見られるため、前年を 2百万頭下回る2億8百万頭と予測している。 今年に入り、EU域内需給はバランスを取り戻し、豚枝肉価格も回復している状 況にあるが、輸出補助金が削減される中で肉豚生産の増加に直結するロシア向け 輸出の伸びは難しい状況にある。今後のロシア経済の動向が注目されるものの、 飼養頭数、生産頭数ともに総じて減少局面に転じたとみられる。
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