オランダにおける養豚農家の離農推進


新たな離農推進策を開始

 オランダでは、深刻化しつつある畜産環境問題に対応するため、養豚農家を対
象に、2000年3月22日から農家の申請に基づく補償金の交付など離農の推進が開
始された。オランダの養豚は、南・東部地域を中心に集約的な生産が行われてお
り、大量の家畜ふん尿による河川、地下水などへの汚染が問題となっている。こ
のため、中央政府は98年9月から豚飼養頭数削減のための法律を施行した(本誌
98年12月号「特別レポート」参照)が、補償が十分でないなどの理由で生産者に
強く反対され、政府に対する訴訟にまで発展し、現在はとん挫状態にある。

 EUの「硝酸塩指令」(91/676/EEC)では、農業生産に伴う硝酸塩汚染を防止
するよう求められているが、オランダでは十分な対応ができておらず、EU委員会
から再三警告を受けていた。また、集約的な生産に伴う過密飼養についても、家
畜伝染病のまん延の危険性が指摘されていた。


養豚農家6000戸以上の削減が目標

 新たな離農推進策の内容は次の通り。

・目標は6,000戸以上の養豚農家の削減で、これにより年間2万1千5百トンのリン
 酸塩排出の削減を図る。

・生産者は養豚生産の中止または削減に対し補償が行われる。

・施策は2002年まで3段階に分けて実施され(今回実施されているものが第1段階)、
 補償額は徐々に引き下げられる。

・生産者は削減したリン酸塩重量(キログラム)に応じて補償金が支払われる。

・第1段階の補償単価はリン酸塩1kg当たり36.5ギルダー(約1千6百円:1ギルダ
 ー=約45円)で、肥育豚1頭当たりでは190ギルダー(約8千6百円)に相当す
 る。

・南・東部の家畜過密地域では、現存の農場施設を取り壊して住宅建設をする生
 産者へ助成するための基金を創設する。助成金は1平方メートル当たり50ギル
 ダー(約2千3百円)である。

 また、全体予算としては、中央政府から6億7千万ギルダー(約3百億円)、地
方から11億2千万ギルダー(約5百億円)が見込まれており、第1段階としては、
これまでに生産減への補償として中央政府から1億ギルダー(約45億円)、養豚
施設の取り壊し・住宅建設に地方から1億7千万ギルダー(約77億円)の少なくと
も計2億7千万ギルダー(約122億円)が配分されている。


目標達成には補償増額が必要か

 第1段階の当初の期限であった4月19日までの承認農家数は1,902戸(生産中止
農家:1,084戸、住宅への転換農家:818戸)と、目標に対し農家数で約3割、リ
ン酸塩削減量では3割弱にとどまったため、5月19日まで1ヵ月間延長された。こ
の結果、最終的な承認農家数は2,415戸(生産中止農家:1,472戸、住宅への転換
農家:943戸)で、年間7,000トンのリン酸塩減少に相当し、必要経費はおよそ2
億1千万ギルダー(約94億5千万円)となった。しかしながら、依然として目標
数値を下回っており、回復基調にある現状の豚肉価格を考慮すると、補償額の
増額などをしない限り思惑通りの離農推進は困難とみられている。

 なお、オランダ同様環境問題を抱えるベルギーでも、豚の飼養頭数削減を盛
り込んだ環境施策の導入を発表した。ベルギー北部のフランダース地方では、
7億2千万ベルギーフラン(約18億円:1ベルギーフラン=約2.5円)の買い上げ
計画が発表され、同地域で飼養されている550万頭の豚のうち約100万頭を削減
することが目標とされている。

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