EU委、成長ホルモンの使用禁止継続を提案


成長ホルモンの使用・輸入禁止措置は適当

 EU委員会は5月24日、家畜への成長ホルモンの使用・輸入禁止措置の継続を適
当とする提案を採択した。中でも発がん物質と考えられるとされた17β‐エスト
ラジオールについては、永続的な使用中止を提案した。この提案は、最近の公衆
衛生に関する獣医政策科学委員会(SCVPH)の見解に照らして決定されたもので
ある。  

 EUのホルモン投与牛肉輸入禁止措置については、世界貿易機関(WTO)紛争処
理委員会で97年8月および98年1月(上級委)に科学的根拠に欠けるとして、WTO
の衛生植物検疫措置に関する協定(SPS協定)に違反していると判定された。こ
れを受けて99年4月30日、SCVPHは、さまざまな証拠を基に「牛へ使用される6
種類の成長促進ホルモン剤(17β‐エストラジオール、プロゲステロン、テスト
ステロン、ゼラノール、トレンボロン、メレンゲステロール・アセテート)は
消費者に対して健康リスク(危険性)をもたらす恐れがある」との見解を発表し
た。すなわち、これらのホルモン剤による内分泌、成長、免疫学的、神経生物学
的、免疫毒性および発がん性の影響が予想されると結論付けた。また、17β‐エ
ストラジオールについては、腫瘍(しゅよう)の形成や進行を引き起こす発がん
物質と考えられるに足る十分な証拠があるとしていた。


2001年7月までに法令の改正・実施を目指す

 その後約1年が経過したため、SCVPHは、EU委員会の要請に基づき、複数の最
新科学レポートにおける知見を踏まえた見解の見直しの必要性を検討していたが、
その必要がないことを全会一致で再確認した。

 この報告を受け、EU委員会は、17β‐エストラジオールおよびそのエステル類
似誘導体については永続的な使用中止を提案することとした。また、そのほかの
ホルモン剤については暫定的使用禁止の継続を提案するとともに、より完全な科
学的情報を収集していくこととしている。

 なお、WTOでのクロ裁定後、EUでは、成長ホルモンの安全性などに関して17の
調査研究が実施されているが、その結果の公表にはさらに数ヵ月を要する見込み
である。

 EU委員会は、今回採択した提案について遅くとも2001年7月1日までには法令の
改正・実施を目指したいとしている。


米国との論争再開は必至

 一方、米国では、EUのホルモン投与牛肉輸入禁止措置に対し、一定品目に100
%の報復関税を課しているが、このほど、より効果的な制裁を目指し対象品目
の入替方式の導入を決定した。ただし、EU関係者は、この米国の決定と今回の
提案との関連は否定している。なお、EUは、輸出業界への被害が大きくなるも
のと予想されるため、6月8日、世界貿易機関(WTO)に対し米国との2国間協議
の開始を要請した。

 米国・EU間のホルモン牛肉紛争は、89年1月のEUによる輸入禁止措置以来10年
以上にわたるが、激しい論争の再開が必至となった。

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