アルゼンチン、念願の口蹄疫清浄国へ


ワクチン不摂取清浄国の地位を獲得

 5月22日から26日までパリの国際獣疫事務局(OIE)本部で第68回年次総会が開
催され、24日の国際委員会の一般会合において、アルゼンチンは口蹄疫ワクチン
不接種清浄国として認定を受けた。なお、隣国ブラジルについては、既に認定さ
れている2州のワクチン接種清浄地域に、今回新たに1連邦地区と南部および中西
部の5州が加えられた。

 今回の決定で、アルゼンチンは国際的に口蹄疫非汚染国と認められることとな
ったが、その道のりは決して平坦ではなかった。1870年に最初の口蹄疫の確認に
始まり、1910年の同国政府による汚染国宣言、続いて1929年には米国の輸入禁止
で大きな痛手を受けることとなる。その後、60年代から生産者も含む組織的な口
蹄疫対策が講じられるが、今回の認定に直接的につながるのは89年に開始された
撲滅対策とされる。その対策の成果により97年、OIEにワクチン接種清浄国とし
て認定され、99年5月からワクチン接種を中止し今回の認定に至った。


各国協議は必要も変更が予想される衛生・品質管理など

 今回の認定を受けて、今後、各国との2国間協議を経た後、以下のような輸出
に際しての衛生・品質管理条件などの変更が予想され、輸出製品のバリエーショ
ンが広がるとともにコスト低下につながるとみられる。

@病気の感染予防から従来EU向け牛肉は生産者から直接購入した牛由来のものに
 限られていたが、リニエルスなど家畜市場を通した牛の肉も輸出可能に

A骨付き肉が輸出可能に

B神経やリンパ節などの除去が不要に

C肉の熟成(2度・24時間)が不要に

D肉のpH測定が不要に

E生鮮状態の内臓が輸出可能に

F肉の煮沸処理などが不要に


市場拡大には克服すべき課題も

 今後の2国間での協議が前提となるが、アルゼンチン産牛肉の既存市場の拡充
と新規市場の開拓に必要な条件はそろった。ただし、克服すべき課題も多い。

 まず、極めて厳しい財政事情の中で、牛肉生産と輸出の振興を同時に図らなけ
ればならない。国内生産と輸出の振興に向けた新機関設立を主な内容とする牛肉
振興計画(仮称)が、最近ようやく大統領府に提出される見通しになったものの、
同機関の運営資金に関してはいまだに不安材料が多い。

 また、輸出余力の点などでも、農家経営の悪化が直接雌牛出荷につながる畜産
事情、衰えない国内消費を反映した輸入価格より有利な国内価格、繁殖率と育成
率の向上、口蹄疫に後れを取る結核とブルセラ病対策などが懸念される。

 さらに、今回の認定によりワクチン接種清浄地域の牛飼養頭数が約8千万頭と
いわれるブラジルの存在も無視はできない。

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