すべての肉牛販売にGSTを課税(豪州)


混乱の中、GST導入へ

 豪州連邦政府のトラス農相は5月3日、7月1日から施行予定の物品サービス税
(GST)法を修正し、取引形態にかかわらず、すべての肉牛取引に10%課税する
と発表した。

 豪州で導入されるGSTについては、基礎的な食料品や医薬品、地方自治体の公
共サービス料金などは、例外として非課税となる。これは、昨年、GST法案が議
会で審議された際、上院のキャスティング・ボートを握る民主党が、国民低所得
層への救済措置として政府に認めさせたものである。

 ところが、その際、非課税品目の範囲や定義について十分な議論を行わないま
ま政治的に決着をつけたため、GSTの導入を目前に控えた現在に至っても、各方
面でいまだに混乱が続いている。


肉牛・牛肉はすべての段階で課税

 肉牛や牛肉については、牛肉は基礎的な食料品とされて非課税となったが、当
初、肉牛は非食用の副産物が多いことから食料品には該当しないとされた。した
がって、肉牛を家畜市場などに生体で販売する場合にはGSTが課税される。

 しかし、肉牛をパッカーに直接販売する場合は、両者の取引が肉牛の状態で行
われるのか牛肉の状態で行われるのか明確でないため、課税・非課税の判断が難
しい問題となっていた。

 この問題については、今年2月、税務当局が「と畜後の衛生検査で食用と認定
され、取引された場合は、食料品となるので課税はしない」との見解を発表し、
最終的な決着がついたかに思われた。

 この見解に対して、肉牛生産者は納得しなかった。その理由は、肉牛生産者が
飼育に際して使用する飼料、薬品、農機具などの生産資材はすべて課税品目であ
り、生産者はGSTを乗せて支払うことになるが、最終生産物である肉牛を食料品
としてパッカーに販売すると、GSTを受け取れないからである。生産者は、後日、
税務当局に生産資材に課税されたGSTの還付を請求できるが、この間(通常1ヵ月
程度)キャッシュ・フローが大幅に減少することになる。

 このため、生産者は、業界団体を通じて政府に対して強力な働きかけを行い、
今回の法案修正を認めさせたのである。


肉牛課税による負担はパッカーへ

 反対に、割りを食う形となったのはパッカーである。今回の法案修正により、
生産者から肉牛を購入する際には例外なくGSTを支払うことになった。後日、
税務当局にGSTの還付を請求できるが、その間のキャッシュ・フローの減少はパ
ッカーにとって大変な負担になる。

 このため、パッカーも業界団体を通じて政府に対して、税金還付請求が、週
ごとに行えるよう、税務手続きの変更を求めたものの、この要求は認められな
かった。この動きに対しトラス農相は、新税制の下、従来の物品税(WST)の
廃止でパッカー業界は年間50億豪ドル(約3千2百億円:1豪ドル=64円)もの
支出削減により多くの利益が得られることを強調し、この機会に競争力のある
業界づくりを目指すことが重要であるとしている。

 目前に迫ったGST導入であるが、解決すべき課題は山積している。

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